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超希少な深海魚<オオヒシマトウダイ>を食べてみた 近縁種との見分け方&その味とは?

最近「深海魚ブーム」が起きており、ヒウチダイの仲間やアオメエソ、ソコダラの仲間などの深海魚を都会の飲食店で見ることができるようになったり、お店で販売されるようになったりしました。

しかし深海魚の中には、ほとんど食用にすることが試みられないような魚もいます。オオヒシマトウダイもそんな深海魚の一種ではありますが、うまく調理すれば美味しく食べられるのです。

筆者とオオヒシマトウダイとの出会い

私がはじめてオオヒシマトウダイGrammicolepis brachiusculus Poey, 1873と出会ったのは2014年の6月のこと。三重県の底曳網で漁獲された個体がFacebookに掲載されていました。

2013年に出会ったオオヒシマトウダイの幼魚(提供:椎名まさと)

それを見ていた私はどうしても欲しくなり、漁師さんに連絡を取り、無事に手に入れることができました。

オオヒシマトウダイの臀鰭棘と皮弁(提供:椎名まさと)

この個体のすごいところは、臀びれの棘が糸状に長く伸びていて、それに小さな皮弁がたくさんついていることです。

こんな大きな臀鰭鰭に皮弁がついていると泳ぎにくそうなので、おそらくは擬態などにつかわれるのだと思われますが、何に擬態しているのかは定かではありません。

オオヒシマトウダイの特徴

オオヒシマトウダイは名前に「マトウダイ」とついています。

実際にマトウダイ目の魚なのですが、マトウダイなどが含まれるマトウダイ科ではなく、ヒシマトウダイ科という別の科に含められています。

マトウダイ(マトウダイ科)(提供:椎名まさと)

背びれや臀びれの基部に棘がある様子はマトウダイに確かに似ています。

棘はマトウダイなどのそれよりも小さいですが、かなり強く不用意に触らないほうがよいでしょう。

オオヒシマトウダイの棘(提供:椎名まさと)

しかしながら、体にほとんど鱗をもっていないマトウダイと異なり、オオヒシマトウダイの体は背腹方向に伸長した細長い形の鱗におおわれています。

オオヒシマトウダイの鱗(提供:椎名まさと)

分布は広く、駿河湾、熊野灘、土佐湾、東シナ海から西・中央太平洋、大西洋、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカにかけて分布しています。

なお、スリナム・ギアナ沖で漁獲され和名がついたトゲマトウダイDaramattus americanus(Nichols and Firth, 1939)はこんにちではオオヒシマトウダイの異名とみなされるようです。

しかしながら、未成魚の斑紋など日本のオオヒシマトウダイと西大西洋のオオヒシマトウダイと異なる点が見受けられ、比較研究を行えば、将来的には別種になるかもしれません。

また、Grammicolepis brachiusculaという学名は西大西洋(正確には西大西洋に接するカリブ海)にある、キューバ産の個体をもとに、キューバのポエイにより記載されたものであるため、日本産のものが西大西洋のものと別種とされるようになれば別の学名が与えられるべきでしょう。

日本産のもう1種ヒシマトウダイ

ヒシマトウダイ科は世界で3種が有効とされています。

ヒシマトウダイ(提供:椎名まさと)

そのうち日本産のもう1種であるヒシマトウダイXenolepidichthys dalgleishi Gilchrist, 1922は、オオヒシマトウダイよりも小型種であり、体長15センチほどになります。

その体はオオヒシマトウダイよりも高く、体高と体長はほぼ等しいサイズで、見た目は従来同じマトウダイ目の中に含まれてきたヒシダイ科の魚のように見えます。

ヒシダイ(提供:椎名まさと)

しかし、ヒシダイとは鱗の形状が大きく異なります。ヒシマトウダイはオオヒシマトウダイのように背腹方向に伸びた鱗をもちますが、ヒシダイはそのような鱗を持ちません。

体色や斑紋にも違いがあり、ヒシマトウダイは銀色で暗色斑が見られますが、ヒシダイでは赤みを帯びた色彩をしています。見分けるのはそれほど難しくないでしょう。

なお、ヒシマトウダイは北海道以南太平洋岸の深海から採集されますが、その水深は90~900メートルとされ、オオヒシマトウダイと比べると、比較的出会う機会も多いかもしれません。

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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