海に潜るとさまざまな群れをなす魚たちに出会います。
今の時期なら、しらすやキビナゴが水中できらきらと太陽の光を反射させ、海のイルミネーションのような幻想的な光景を見ることができます。
そんなきらきらと群れをなす魚たちにも、昼行性の種と夜行性の種が存在します。暗闇の中できらめく魚たちがいるのです。
群れで過ごす夜行性の魚たち
まずは、筆者がダイビングで出会った夜行性の群れる魚たち、ミナミハタンポとムツを紹介します。
ミナミハタンポはスズキ目ハタンポ科に属する魚。体長は約12センチと小さな魚で、大きな群れて生活します。

一般的に食用としては流通していないようですが、地元では食べる人も多いそう。唐揚げや塩焼きがおすすめとのことで、いつか食べてみたいものです。
続いては、ムツ。ムツはスズキ目ムツ科に属する魚です。

ハタンポと違い、成長すると単独で過ごすようになります。ムツといえばアカムツ(ノドグロ)などが有名ですが、名前が似ているだけで実は分類上は全くの別物です。
「ムツ」とは、脂がのっていてむつっこい(こってりしている)からつけられたのではないかという説があるそうです。
ハタンポやムツは昼間どこにいる?
ハタンポやムツといった、夜になると姿を現す魚たちは昼間、沈船の中や洞窟の奥といった光の届きにくい静かな場所で、じっと夜を待っています。

なので、昼間に海に潜って沈船や洞窟の暗がりにいくとたくさんのハタンポやムツに会うことができ、ライトで照らすとキラキラと泳ぎ回る姿が見れます。
夜行性のミナミハタンポの行動を見てみよう
東京大学の小枝助教らの研究グループは2021年、魚に光るタグをつけて暗闇の中を泳いで追跡するという手法で、ミナミハタンポの夜の行動を追跡しました。
昼間はサンゴ礁域の洞窟などで群れをなしていますが、夜間になるとサンゴ礁の外の沖合にでて回遊することがわかったのだといいます。

捕食リスクが高いため、多くの魚類が利用できないサンゴ礁の外の豊富な栄養を摂取するために夜間行動が行われているとのことです。また、昼間はサンゴ礁内で排泄することにより、サンゴ礁の外から内までエネルギーを運搬する重要な役割を果たしていることがわかったといいます。
上記はミナミハタンポの例ですが、一般的に夜間は視界が悪く、昼間に活動する視覚型の捕食者が少ないことから、捕食圧が下がると考えられています。夜行性の魚は、こうした環境で活動することで生存率が高まり、その性質が進化の中で定着してきたのでしょう。
夜行性の魚と出会うには
そんな夜行性の魚たちと、昼間に海で出会うには洞窟や暗がりを覗いてみてください。
そっと寄り添って過ごしている姿が見れるかもしれません。
サンゴ礁の生態系を支える小さな魚たち。実際に観察すると、自然の神秘を目の当たりにしたような気分になりますよ。
(サカナトライター:shell)