日本には多くのことわざや慣用表現がありますが魚が由来になっているものも少なくありません。この記事では、そういった「サカナことば」を紹介します。
タイを使った有名なことわざ
タイといえば日本を代表する魚とも呼ぶべき存在であり、我々の生活には欠かせません。タイは縄文時代の貝塚からも発見されていることや、アンコウと共に江戸5大珍味の三鳥二魚の一つに数えられていることからも、古くからタイが食用に使われてきたことがうかがえます。
そんなタイを使った有名なことわざが「海老で鯛(タイ)を釣る」。これは小さな労力で大きな利益を得る、という意味です。実際にエビでタイを釣るシチュエーションはよくあります。もっとも現代ではエビもタイも高級品なので、エビを餌に使うのはもったいないかもしれませんね。
他にもタイを使った有名なことわざに「腐っても鯛」があります。これは本来良いものは腐っても品格が保たれている、という意味です。腐るという言葉から悪い意味にも聞こえてしまいますが、一応は良い意味で使われます。冷蔵保存が容易になった現代では腐ったタイをお目にかかることはあまりなさそうですね。
タラが由来は誤り?
お腹いっぱい食べたことを「たらふく食べた」と言いますが、漢字だとどのように書くかご存じでしょうか?
答えは「鱈腹」
「鱈腹」の由来はタラがなんでも食べてしまう食性であることや、タラの腹部が大きく膨らんでいることとされる場合がありますが、実はこれは当て字であり、「十分な」を意味する「足る」が原型とされています。とはいえ、タラが大食漢であることことも事実なので、タラが語源と言われても納得してしまいますね。
またデタラメという言葉を使ったことがある人は多いのではないでしょうか。
デタラメは漢字で書くと「出鱈目」ですが、この言葉も当て字なのです。原型は江戸後期から博徒の間で使われていた「出たら目」であり、根拠がないことや適当なことなどの意味を持ちます。「出鱈目」の当て字こそまさにデタラメなのかもしれませんね。
「トド=ボラ」?
「とどのつまり」は「結局のところ、最終的に」などの意味を持つ言葉ですが、ここで言うトドは海獣のトドではなくボラの呼称のひとつであるトドに由来します。ボラは出世魚と知られており、小さい方から順にイボコ→イナッコ→スバシリ→イナ→ボラ→トドと呼称が変化します。このことから、もう先がないことを「とどのつまり」というようになったそうです。
イナに由来する言葉もあります。
鯔背(いなせ)は粋で勇みのあるさっぱりしている様を意味する言葉です。かつて、日本橋魚河岸の若者で流行したイナの背に似た髷である「鯔背銀杏(いなせいちょう)」の略語であり、魚河岸の粋で勇み肌の者を鯔背と呼んでいたのが始まりだそうです。
このように実は魚が言葉の由来だったということは意外にも多く、今回ご紹介した言葉以外にも魚が由来になっているものは多くあります。また、魚がことわざや慣用表現に使われているということから、人と魚は密接な関わりがあったことが分かりますね。
(サカナト編集部)