アンコウ・キアンコウ以外のアンコウ科魚類
日本にはアンコウ科魚類はアンコウ属・キアンコウ属のほかに、ヒメアンコウ属とダルマアンコウ属という、もう2つの属が知られています。
ヒメアンコウ属は鰓孔が胸鰭下方および後方に位置するアンコウ属・キアンコウ属と異なり、鰓孔が胸鰭の前方にまで達するという特徴を持つ属で、日本産種はヒメアンコウLophiodes naresi(Gunther, 1880)など7種からなります。
ヒメアンコウは底曳網漁業などで漁獲される普通種ですが、シモフリハナアンコウのように九州~パラオ海嶺や天皇海山など、遠隔地にしかいないような種も知られています。
ヒメアンコウ(提供:椎名まさと)ダルマアンコウ属の魚はやや体高がある、その名のとおり丸っこい体が特徴です。
日本産種は現状ダルマアンコウSladenia zhui Ni,Wu and Li, 2012のみからなり、日本近海においては東シナ海で稚魚が採集されているのみのようです。
なお、ダルマアンコウ属と思われる魚は小笠原諸島の深海でも水中写真が記録されていますが、これはダルマアンコウ属の別種となる可能性があるようです。
アンコウの類は美味しい
筆者はアンコウ科の魚を食するのが好きです。なぜならば身だけでなく、内臓も美味しく食べることができるからです。
身・皮・鰭・鰓・肝・胃・卵巣などはいずれも食用にすることができ、これらは俗に「アンコウの七つ道具」と呼ばれています。
アンコウの肝。ポン酢で食べるとおいしい(提供:椎名まさと)身だけでなく内臓もほとんどを食することができるのがアンコウの魅力ではありますが、大きいものは家庭ではなかなか捌くのが難しいのが難点ですので、小ぶりのものを購入するとよいでしょう。その場合、キッチン用のハサミを使って捌くのが便利です。
底曳網漁業もシーズンインし、家庭でもアンコウの味噌汁や鍋ものなどを楽しむことができますので、ぜひとも作ってみて欲しいと思います。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献
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Matsunuma M.and Muto N. 2020. Description of a Pelagic Juvenile of the Poorly Known Anglerfish Sladenia zhui (Lophiidae) from the East China Sea. Species Diversity 25: 107?116.
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