アフリカの中央を流れるコンゴ川は、9つの国をまたぎ、アマゾンに次ぐ広大な森林に覆われる巨大な川です。河川一帯はラムサール条約にも登録されており、世界的にも重要な湿地帯です。
川でありながら、その規模は圧倒的。中には深海のような環境まであるコンゴ川には、どんな生物がいるのでしょうか?
コンゴ川の源流から順に、生息する生きものたちを紹介します。
コンゴ川の水源は大地溝帯
コンゴ川の水源は、大陸東部の大地溝帯(巨大な谷でプレート境界の一つ)です。
将来は海になる大地の裂け目ですが、現在は内陸の高地。ルウェンゾリ山地やタンガニーカ湖など、アフリカ奥地の秘境が名を連ねます。
ここにある標高1500メートル前後の複数の湖が、コンゴ川の源流です。
水源域には高山の雲雨林や湿地が広がり、ゾウやチンパンジーなどの野生動物の生息地。水辺にも豊かな生態系が広がっています。
コンゴ川全域で見られる<カバ>
日本の動物園でも人気なカバ。最大で3トンを超えることもある、ゾウに次ぐ大型哺乳類です。
カバはコンゴ川全域でみられますが、内戦などの人間活動の影響により数を減らしています。
鮮やかな色の淡水魚のグループ<シクリッド(カワスズメ科)>の仲間たち
シクリッドは鮮やかな色の淡水魚のグループで、コンゴ川全域でみられます。シクリッドとは、スズキ目カワスズメ科に属する魚の総称です。
シクリッドの一種(提供:PhotoAC)特に水源域を象徴する生物で、湖ごとに固有種が進化。その鮮やかな色や模様から、日本のみならず世界中で観賞用熱帯魚としても親しまれています。
アフリカのシクリッドは、アフリカン・シクリッドとして取引されることもあります。
乾季がある上流に適応した生物たち
大地溝帯の西にある、世界最大の流量を誇るボヨマ滝の辺りまでがコンゴ川の上流。資源が豊富ですが、紛争が絶えない危険地帯です。
上流の高原エリアは、乾季と雨季が明確に分かれます。乾季には河川や湿地が干上がってしまうことも。ここでは、泥の中でも生き延びられる水生生物がみられるのです。
古代魚の仲間<プロトプテルス(アフリカハイギョ)>
古代魚として有名な、肺呼吸を行うハイギョ(肺魚)の仲間です。
プロトプテルス(提供:PhotoAC)乾季になると、泥に潜って夏眠を行います。
乾季を生き延びる古代魚<ポリプテルス>
ポリプテルスは胸びれで底を這うように泳ぐ古代魚です。この魚も浮袋が変化した肺をもっており、空気呼吸ができるため乾季を生き延びることがあります。
ポリプテルス(提供:PhotoAC)ハイギョやポリプテルスは、飼育下でも水面に浮かび酸素を得る姿が観察できるようですよ。
クララ(ウォーキングキャットフィッシュ)
空気呼吸をするナマズのグループ。生息地が干上がっても別の湿地へ移動できます。
アフリカツメガエル
アフリカツメガエル(提供:PhotoAC)日本の動物園・水族館で飼育展示されていることもあるアフリカツメガエルも生息しています。ふだんは水中にいますが、干上がると泥に潜って1年間休眠できます。
森林に覆われた中流水没林に適応した生物
ボヨマ滝を越えると川はコンゴ盆地の中心部に入り、穏やかな流れが続きます。
一帯の中心都市キサンガニを始め村落が点在しますが、人口はまばら。広大な熱帯雨林が広がり、オカピやマルミミゾウ、ボノボといった珍獣が生息します。
川の周囲は時期により水没する水没林で、川と森林の生態系が繋がっています。
2011年に再発見<クサガエル>
色が鮮やかな樹上性のカエルのグループ。地上の植物に産卵します。
皮膚が透けて、体の組織や卵が透けて見える不思議な見た目が特徴。1950年に発見された後は目撃例がありませんでしたが、2011年に再発見されました。
1m超の大型カワウソ<コンゴツメナシカワウソ>
カワウソといっても、コンゴにすむのはコンゴツメナシカワウソという仲間。私たちが想像する可愛いコツメカワウソとは違い、1メートルを超える大型のカワウソです。
現地では、その肉を食べるために捕獲されているのだとか。