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同じ軟骨魚類<サメ>と<エイ>の違い&見分け方とは? 進化の分岐からその秘密を探る

海の食物連鎖の頂点に立つサメと、海底を優雅に泳ぐエイ。サメとエイは「見た目が違う魚」として知られていますが、実はどちらも「軟骨魚類」と呼ばれる同じルーツを持つ仲間です。

では、なぜ姿形が大きく違い、暮らし方も異なるのでしょうか。

サメとエイの進化の歴史や体のしくみ、意外と語られることの少ない“境界線のあいまいさ”に迫ります。

サメとエイの「分岐点」 共通の祖先からなぜ分かれた?

軟骨魚類は、デボン紀(約4億1900万年前~3億5900万年前)に出現し、デボン紀後期(約3億8500万年前から3億5920万年前)には最古のサメ「クラドセラケ」が誕生しました。その後、サメとエイの進化上の分岐点が訪れます。

当時のネズミザメ亜目の仲間による激しい襲撃から逃れるため、サメとエイの中間的な体形を持つカスザメのような種が現れました。

医学博士である福田芳夫の『新・私の古生物誌(11)-サメとエイ類の進化史-』によると、ヒボーダス目と呼ばれるサメは、ネズミザメ亜目による激しい襲撃から逃れるため、海底で生きることを選択。そしてヒボーダス目は、サメとエイの中間的な体形に変化し、約1億5000万年前のジュラ紀には現在見られるエイのような生き物になったと述べられています。

サメとエイで独自に進んだ適応

そして、同じ祖先から分かれたサメとエイは、それぞれ独自の適応を遂げました。

サメは多様な環境に適応するため、祖先から受け継いだ流線形の体を基盤としつつも、海を泳ぐ遊泳型海底にすむ底生型に分かれました。

底生型のネコザメ(提供:PhotoAC)

一方でエイの多くは、約1億5000万年前に誕生した姿から大きな変化を遂げずに、底生生活に適した扁平な体形を保っています。

海底に潜むエイ(提供:PhotoAC)

ただ、全ての種が底生生活を送っているわけではありません。

イトマキエイやトビエイのように、扁平な体形を保ちながらも、回遊型の生活に適応した種も出現しました。

サメとエイの共通点と相違点

サメとエイの最大の共通点は「軟骨」でできた骨格です。硬い骨を持たないぶん、軽くしなやかで、海中をすばやく動くのに適しています。

軟骨魚類の秘密<シックス・センス>

軟骨骨格のほかにも、サメとエイが共通して持つ驚異的な能力があります。それが、顔や鼻先の部分にある微細な穴「ロレンチーニ器官」です。

サメとエイはロレンチーニ器官を使い、他の魚の筋肉の動きから発生する微弱な電気信号を感知できます。

砂の中に隠れた獲物や、夜間など視界の悪い環境でも獲物を見つけ出す「第六感(シックス・センス)」とも言える能力です。

呼吸と体の形から見える<サメとエイの生き方>

サメは、遊泳型と底生型によって呼吸法が大きく分かれています。

海中を巡回する遊泳型のサメ(ホホジロザメやアオザメなど)は、流線形の体と強い尾びれを持ち、「ラム換水」と呼ばれる呼吸をします。これは、口を開けて泳ぎ続けることで水を鰓(エラ)に流し込む呼吸法で、ラム換水で呼吸をするサメは約500種のなかでもごく少数と言われています。

一方、海底で生活する底生型のサメ(ネコザメやトラザメなど)やエイは、海底で静止して呼吸できます。

もっとも、底生型のサメとエイの根本的な違いは、体の形にあります。

底生型のサメは、口から吸い込み噴水孔(気門)から出す口腔(バッカル)ポンプ換水を行い、静止していても呼吸が可能です。

エイは口が腹面にあるため、底にいるときに口から水を吸うと砂を吸い込むリスクがあります。そのため、エイは目の後ろにある噴水孔から水を吸い込み、エラに流すことに特化しています。

サメっぽいエイ、エイっぽいサメ

サメとエイの中には、サメっぽいエイエイっぽいサメといった、ちょっと変わった種類がいます。

たとえば、ノコギリエイはサメに近い姿をした生き物ですが、分類上はエイの仲間です。また、カスザメは見た目が平たく、エイのように海底に潜って生活していますが、分類上はサメの仲間です。

さらに、シノノメサカタザメは名前に「サメ」とついているにもかかわらず、エイの仲間(サカタザメ科)であり、エイのように平たく、胸びれが発達した体型をしています。

シノノメサカタザメ(提供:PhotoAC)

エラの位置で見分ける

上記のような変わった種類の見分け方は「エラの位置」。サメの仲間はエラ穴が体の側面にあり、エイの仲間はエラ穴が体の腹側にあります。

こうした例外の多さこそ、軟骨魚類の奥深さ。分類がはっきりしているようで、実は境界があいまいなのが軟骨魚の面白いところです。

進化の多様性が生んだサメとエイの魅力

サメとエイは、同じルーツを持ちながら、環境への適応によって大きく姿を変えた仲間です。

例外的な種類まで含めて観察すると、その境界線は驚くほどゆるやか。進化がつむいだ多様性こそ、軟骨魚の最大の魅力と言えます。

水族館などで観察する機会があれば、ぜひ種ごとに見比べて、その魅力を感じてみてください。

(サカナトライター:ムク家)

参考文献

新・私の古生物誌(11)-サメとエイ類の進化史-

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ムク家

田舎育ちのムク家と申します!幼少期から自然に囲まれ、さまざまな生き物と触れ合って育ってきました。なかでも魚が大好きで、釣りにもよく行きます。ちょっとだけ世界が広がるような記事を目指して、魚の魅力を身近な目線で発信しています。

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