みなさんはオニヒトデをご存じですか?
オニヒトデは毒を持つヒトデで、サンゴを食べる嫌われ者。毒々しい色やたくさんのトゲトゲを持つため、見た目からも危険生物であるように見受けられます。
このオニヒトデですが、サンゴ礁でシュノーケリングをしていると割と見かけるヒトデでもあります。今回は、オニヒトデの生態や駆除について紹介します。
サンゴを餌にする大型のヒトデ
オニヒトデ(学名:Acanthaster planciI)は30〜60センチにも成長する大型のヒトデで、10〜20本もの多数の腕があります。漢字では「鬼海星」と書きます。
背面のトゲには毒があり、何度も刺されるとアナフィラキシーショックで死に至る場合もあるため、注意が必要です。
オニヒトデはサンゴをエサとするヒトデで、主に成長が早いミドリイシやコモンサンゴなどを食べます。大量発生した場合や飢餓状態になると他のサンゴも食べてしまい、サンゴ礁が壊滅することがあるため、駆除の対象となっています。
6〜7月頃に数百万個以上の卵を産卵し、受精卵からプランクトン幼生になります。早ければ2年で20センチほどまで成長し、産卵できる個体も出るため、かなりの増殖スピードをもつ生物といえるでしょう。
オニヒトデによるサンゴの被害
オニヒトデは胃袋を裏返してサンゴに密着させ、消化液でサンゴを溶かして吸収するという数種類のヒトデに特徴的な食事方法でサンゴを食べます。そのため、食べられたサンゴは死んで骨だけとなり、白化してしまうのです。
1匹のオニヒトデは1年間に5〜13平方メートルもの面積のサンゴを食べる(オニヒトデのはなしー沖縄県)と言われており、駆除しなければサンゴ礁の維持は困難になります。
オニヒトデの駆除方法は「人力」
オニヒトデはサンゴに密着するため、人力で引き剝がすしか駆除方法はなく、駆除は大変です。大量発生した場合、人力だけでは間に合わないこともあるため、大量発生前に定期的に駆除を実施しなければなりません。
天敵には、ホラガイやフリソデエビ、フグの仲間、モンガラカワハギ、ハタの仲間などが知られていますが、オニヒトデだけを食べるわけではないため、大量発生時には人の手による駆除しか効果がないでしょう。
これまで「薬品を注射する」「水中柵を設置する」「水中切断」などが試されましたが、課題が多く、まだ人による駆除以外の方法は実用化できていません。
沖縄でも対応に苦慮
沖縄県では、駆除の予算が足りないこと、広範囲での大量発生が続いているため即効性が期待できないなど対策に苦慮しているのが現実です。近年の海水温の上昇によるサンゴの死滅の問題もあり、サンゴ礁の維持は非常に困難になりつつあります。
なお、オニヒトデ大量発生の原因として、オニヒトデ幼生の成長に、海水の富栄養化が関与しているという説が有力になっています。開発工事による赤土の流入や生活排水の流入が、オニヒトデ幼生のエサとなる植物プランクトンを増やすという説です。
つまり、オニヒトデ大量発生は人間が招いている可能性が高く、自然環境を守るための施策が必要になるということです。自分たちの生活が環境に与える面を学び、日頃の生活に気を付けたり自治体や政府の対策を注視したりしていくことが重要です。
(サカナトライター:額田善之)