大都市に囲まれた大阪湾。
この海域では漁業や遊漁、海洋開発、物資の運搬など様々な人間活動がおこなわれています。
そんな大阪湾ですが、市民によるイルカの観察が報告されている海域でもあるのです。しかし、これまで大阪湾のイルカについては科学的な調査は行われてきませんでした。
そこで、神戸大学の岩田高志助教らから成る研究グループは大阪湾でモニタリングを実施。イルカが出現する時期を明らかにしました。
この研究成果は「Aquatic Mammals」に掲載されています(論文タイトル:A Possible Example of the Coexistence of Dolphins and Marine Economic Activity in Osaka Bay, Japan)。
大阪湾におけるイルカの報告
大阪湾は大都市に囲まれた海域で、ここでは漁業や遊漁、海洋開発、船舶の交通など、様々な人間活動がおこなわれています。
大阪湾(提供:PhotoAC)1000万人以上もの生活圏を支える大阪湾ですが、その一方で市民によるイルカの目撃が報告されている海域でもあるのです。しかし、大阪湾のイルカについては、これまで科学的な調査は実施されておらず、この海域におけるイルカと人間との関係は謎に包まれていました。
そうした中で、神戸大学の岩田高志助教らから成る研究グループは、水中にマイクを設置して、海洋生物や船舶の音を記録する「受動的音響モニタリング」を実施。得られたデータの解析を行いました。
イルカの出現は<冬から春に集中>
この研究では大阪湾内の明石海峡周辺2地点で受動的音響観測機「A-tag」が設置され、約1年半合計1万3000時間以上の音響データが記録されています。
取得したデータを解析した結果では、マイルカ科のクリック音(イルカが発する鳴き声)を合計253回検出。クリック音の出現は12~4月に集中しており、夏と秋にはほとんど検出されなかったといいます。
さらに、季節ごとにおこなわれた目視観測調査では、ハセイルカがマイルカ科中で唯一確認されていることから、検出されたクリック音はハセイルカと推察されました。
また、クリック音は夜間に多く検出されているほか、捕食時に発せられる「バズ音」も検出。これらの解析結果は、ハセイルカが夜間に明石海峡で採餌をしている可能性が示唆するものとなりました。
ノリ養殖とイルカの関係
今回、検出されたクリック音の数については、水温が低いほど多くなることが確認されています。
加えて、この水温によるクリック音の増加は、冬~春に行われるノリ養殖の時期と一致することが判明しました。
ノリ養殖網は小動物の棲家なる可能性があるほか、クロダイなどの魚はノリを食べることが知られています。
これにより、冬~春に生態系が豊かになった海域を、イルカが利用している可能性が示されたのです。
人とイルカの共存
都市化した海域である大阪湾。中でも日本有数の海上交通量を誇る明石海峡で、夜間におけるイルカの採餌が明らかになりました。この知見は大阪湾のような環境でもイルカが適応し、都市部でも人間とイルカが共存できる可能性を示すものです。
今後はハセイルカ以外のイルカ類や、大阪湾以外の都市湾についても研究が進んでいくことが期待されます。
(サカナト編集部)