ゴールデンウィークの期間に釣りに出かける人も多いのではないでしょうか。
太平洋沿岸だと、この時期はアジやシロギス、クロダイのほか、大型のアオリイカなどが釣れるようです。
大型連休は漁港にも釣り人が多く集まりますが、彼・彼女らが気づかないような小さくて面白い生き物たちが潜んでいることもあるのです。
筆者はそうした比較的小さい生き物をタモ網やひしゃくですくい、採集・観察しています。ここでは、5月頃に現れる生き物たちを紹介します。
海水温が上がる春の終わりの海
5月は春の終わりということもあり、水温は20度近くなります。
海藻の種類も冬に多い紅藻や春先におい茂るフクロノリから、夏になると増える褐藻(色が茶色の海藻の仲間)に移行。中でもホンダワラなどのヒバマタ目が大きくなり始め、幼魚たちのゆりかごである流れ藻も出てきます。
また、降水量が増えることでプランクトンも増え始め、海も白濁りすることが多くなります。
5月の漁港で観察できる生き物たち
実際にこの時期の漁港で観察できた生き物たちを紹介します。
水族館では見られないような知名度の低い生きものがみられることも多く、生き物や自然についての知見を広げられる良い機会ともなりますよ。
テーブルランプのような見た目<ハナアカリクラゲ>
ハナアカリクラゲ Pandea conica (Quoy & Gaimard, 1827) は、名前の通りピンク色でフリル状の口唇とテーブルランプのような外見が美しい、外洋性のクラゲです。
ハナアカリクラゲ(撮影:俊甫犬)長い触手をもっており、他のクラゲなどのプランクトンを捕食します。このクラゲには2年連続で出会えました。
ショウジンガニのメガロパ幼生
カニの子どもは、私たちがカニときいて思い浮かべる姿とは違う姿をしています。
1段階目は前後に角が伸びたゾエア幼生、脱皮すると尾部と大きな目が特徴のメガロパ幼生となり、それを経て大人のカニと同じ姿になります。
私が見つけたのは、ショウジンガニ Guinusia dentipes (De Haan, 1835) のメガロパ幼生です。
ショウジンガニのメガロパ幼生(撮影:俊甫犬)東北以南の岩場や岸壁に生息するショウジンガニの子どもは、流れ藻に乗って生息範囲を広げる旅に出ます。私が見つけたのも流れ藻に大量に住み着いていた子たちでした。
流れ藻にすみついていたメガロパ幼生たち(撮影:俊甫犬)キンチャクダイの一種の幼魚
キンチャクダイとは、鑑賞魚でおなじみの海のエンゼルフィッシュの仲間の総称です。
キンチャクダイの一種(撮影:俊甫犬)日本国内には7属32種が確認されています。筆者が見つけた個体はまだ幼く、種類が同定できないものでした。
出現率はかなり珍しく、このようなレア生きものを探してみるのも採集の醍醐味です。
磯に生息する刺胞動物<シロガヤ>
シロガヤ Aglaophenia whiteleggei Bale, 1888は主に磯に生息する刺胞動物です。偶然、千切れたものが漂っているのを見つけました。
シロガヤ(撮影:俊甫犬)ヒドロ虫というクラゲの仲間ではありますが、「メデューサ(遊泳形態のクラゲ)」を出現させないという変わった特徴。様々な生き物と共生することがあり、この株にはワレカラとウミウシの卵がついていました。
なお、刺されるとかぶれることがあるため、注意が必要です。
漁港には不思議な生き物がたくさん!
このように、漁港は無機質な場所のように見えて、実は様々な生き物が住んでいたり流れついていたりします。
釣りをしている最中にも、ぜひ水面下を覗いて観察してみてください。思いがけない発見や出会いがあるかもしれません。
(サカナトライター:俊甫犬)
参考文献
鈴木香里武(2020)、岸壁採集!~漁港で出会える幼魚たち~、JAM HOUSE
中坊徹次(2018)、小学館の図鑑Z 日本魚類館、小学館