水族館で人気のマンボウですが、実は食用としている地域があるのをご存じでしょうか?
この記事ではマンボウの食文化についてご紹介します。
マンボウは謎が多い
マンボウはフグ目マンボウ科に属する大型の海水魚で世界中の温帯・熱帯海域に生息。外洋の表層を泳いで暮らしています。マンボウの名前の由来はマン(丸い)、ボウ(魚)だそうです。また、英語でOcean sunfish、学名ではMola molaと命名され、和名に引けを取らない変わった名前になっています。
尾びれはなく舵びれと呼ばれるマンボウ特有のひれを持つことが特徴で、この舵びれはマンボウ属を識別するうえで重要な形質。見かけによらず肉食性でクラゲ、イカ、甲殻類、魚などを食べています。
日本のマンボウ科は現在、ヤリマンボウ、ウシマンボウ、マンボウ、クサビフグの2属4種が知られており、中でもクサビフグはとてもユニークな形をした魚です。また、マンボウ属は長らく2種とされていましたが、隠蔽種を含んでいることが判明し、2017年にMola tectaが記載されました。種小名のtectaはラテン語で「隠れた」を意味し、和名もカクレマンボウが提唱されました。
しかし、和名があるものの本種はニュージーランド、オーストラリアをはじめとする南半球に生息するマンボウであり、日本からは記録がありません。
フグ目に属するマンボウはフグ毒を持っているのか気になりますが、マンボウ科の魚に毒があるという報告は現在のところはありません。それどころか、実は食用になることが多い魚ということをご存知でしょうか?
元は漁師が船上で食べていた定番マンボウ料理
食用としてのイメージが薄いマンボウですが、日本ではマンボウを食べる文化が継承されています。江戸時代の『料理物語』にマンボウ料理が登場するなど、日本人が古くからマンボウと関わりを持っていたことがわかります。また、マンボウを漢字で「翻車魚」と書きますが、江戸時代は「浮亀」と表記されていました。これは海面を横になって漂う姿が由来になったとされています。
現代でもマンボウを食用にする地域は各地にありますが、特に有名なのは三重県でしょう。
三重県の東紀州地域では大敷網漁と定置網で漁獲されるマンボウを食用にしています。ブリを狙った時期に漁獲があることから、冬場に獲れることが多く、マンボウが獲れるとブリも獲れると言われているそうです。
また、東紀州におけるマンボウの旬も12~4月とされています。かつて、東紀州のマンボウは漁師たちが持ち帰って食べるものでしたが、現在はマンボウを取り扱う店舗も増えておりマンボウの価格も上がっているそうです(まんぼうとうつぼ-東紀州の「旬」05号)。
マンボウは非常に大きいため船上で解体されて水揚げされ、その後、市場へ売られ地元の飲食店や小売店へ運ばれます。東紀州でマンボウは様々な料理で食べられており、郷土料理である「まんぼうの酢味噌和え」や、かつて漁師さんが船上で作っていたという「まんぼうの肝和え」は非常に美味だそう。
他にもマンボウの小腸を「こわた」と呼び珍味として食べているそうです。
アカマンボウはマンボウの仲間?
よくマンボウと間違えられるのがアカマンボウです。本種は名前にマンボウとつくものの、マンボウ科とは異なるアカマンボウ目に属する深海魚で、延縄漁などで漁獲があります。
アカマンボウ目には本種の他にリュウグウノツカイやサケガシラ、フリソデウオなどの人気深海魚が多く含まれますが、日本産アカマンボウ科は本種のみ。
本種はしばしばマグロ類の代用魚として話題になりますが、アカマンボウはマグロ類の消費量を賄える程の漁獲量がないことから、本種をマグロ類の代用として使うのは難しいという意見もあります。
マンボウは水族館の人気者でもあり、産地では古くから食文化が残っている重要な食用魚でもあるのです。東紀州では多いときで1日10匹のマンボウが獲れることもあるそうなので一度産地で食べてみたいですね。
(サカナト編集部)