エイといえば誰もが知る水族館の人気魚ですが、食べたことがある人は少ないのではないでしょうか?
意外なことに日本は古くからエイを食べる文化があり、縄文時代の貝塚からアカエイやトビエイの歯が出土している他、尾棘が槍先に使用されていたそうです。
様々な食文化が伝承されているエイ
エイは日本各地で食用にされ、様々な食文化が伝承されています。奈良県ではアカエイ科のアカエイを使った郷土料理が伝承されており、調理法は煮付けや汁物、焼き物など様々。
エイはサメやギンザメと共に軟骨魚類に分類され、独特なアンモニア臭と軟骨から成る脊椎が特徴です。アンモニアには刺激臭があることから、食用として敬遠される一方で魚の保存効果を高めてくれる役割を持っています。
流通が未発達だった時代において魚は山間部にとって貴重な食材であったため、特に無塩で食べることのできるサメ・エイはごちそうでした。奈良県の山間部ではエイ料理が現代まで伝承されており、エイを「エエ日」にかけて正月に煮こごりで食べる文化が知られています。
北日本では「カスベ」
北日本ではガンギエイ目のガンギエイ科及びヒトツセビレカスベ科に属するエイをカスベと呼び、カスベを使った煮付けは北海道の郷土料理です。カスベの由来は諸説あり、アンモニア臭がることから「カスにしかならない魚」やアイヌ語のカンヌペが語源とも言われています。
ガンギエイ目の魚は北方を中心に繁栄している板鰓類で日本に30種以上のガンギエイ目が分布していますが、そのうち北海道で食用になるのはメガネカスベ(マカスベ)とソコガンギエイ(ミズカスベ)。ミズカスベは名前の通りマカスベよりも水っぽく、マカスベよりも安価で売られています。
カスベは底引き網や刺し網で漁獲され、産地のスーパーではごく普通に見ることができます。関東への入荷も多く、ムキカスベと呼ばれるカスベの加工品やカスベの頬肉であるかすべほっぺなどが流通してます。
また、山形県では北海道のカスベを乾燥させたものを「からかい」と呼び、これを煮付けにしたからかい煮は山形の郷土料理です。
エイの刺身を意味する「ホンオフェ」
韓国では日本と同様に魚を生食する文化が発達しており、エイはホンオフェと呼ばれる韓国の郷土料理の原料として知られています。
ホンオフェは韓国語で「エイの刺身」を意味する言葉ですが、日本で食べられているような生の刺身ではありません。この料理はガンギエイ科の魚を壺の中で発酵させた発酵食品で、世界の発酵食品の中でも屈指の臭いを持つと言われています。ホンオフェの食べ方はマッコリを飲みながら食べる方法や豚肉、キムチと一緒に食べる「三合」と呼ばれる料理があります。
独特な臭いを持つことから食用として敬遠されたこともありますが、流通が発達した現代では新鮮なエイを入手することができます。売られているエイは既に加工されたものが多くて調理しやすく、骨が軟骨なので魚の骨が苦手な方にもおすすめの魚です。
(サカナト編集部)