日本の海には多種多様な魚が生息しており、中には異なる分類群にもかかわらず姿が似ている魚たちがいます。
キントキダイ科の魚は赤い体と大きな眼が特徴であり、一見するとキンメダイの仲間のように見えますが浅海から深場に生息するスズキ目魚類です。
この記事ではキントキダイ科の魚とキンメダイとの違いについてご紹介します。
真っ赤な体を持つキントキダイ科の魚たち
キントキダイとはスズキ目キントキダイ科に属する魚の総称で、2024年4月現在、日本で11種ものキントキダイ科魚類が知られています。
本科の魚たちは南方に生息する種が多いものの、関東でもチカメキントキやホウセキキントキ、クルマダイなどの種が出現。先月、公表された「宮城県から得られた北限記録を含む暖水性魚類4 種の写真に基づく記録」では写真に基づきミナミクルマダイの宮城県初記録、北限記録が更新されました。
キントキダイ科はいずれの種も赤い体、細かく剥がれにくい鱗、大きな眼が特徴で、似た種が多く同定がやや難しいグループ。南方を中心に各地で食用にされており、ホウセキキントキやクルマダイ属の魚は水族館でもよく見られます。
ところでキントキダイは漢字で「金時鯛」と書きます。この名前の由来を知っていますか?
実はキントキダイの金時は赤い色を意味する単語として使われています。金太郎(坂田金時)が浮世絵で赤い肌で描かれることが多かったことに由来し、金時は赤色の代名詞として使われているのです。
また、英語ではBig eyeと呼ばれており、大きな眼がそのまま名前の由来になっています。英語圏では赤い色ではなく大きな眼に注目したということですね。
チカメキントキとは
比較的食用になりやすいチカメキントキは水深100メートル前後の岩礁域に生息し、深場の釣りでしばしば漁獲されますが、幼魚は時に浅海域に出現します。本種は別名アカメ、カネヒラとも呼ばれ、いずれの他のキントキダイ科でもしばしば用いられる呼び名です。
本種の特徴は何といっても大きな胸びれであり、この胸びれが非常に大きいことから他の日本産キントキダイ科魚類と容易に区別することができます。深場の釣りの他、定置網でも漁獲があり、北海道~九州、沖縄、小笠原諸島にも生息しています。
市場や魚屋では単にキントキダイというと本種を指すことが多く、刺身や煮付けなどで食べられています。
キントキダイとキンメダイの違いは?
キントキダイ科の魚は赤い色と深場に生息する生態に加え、名前が似ていることからしばしばキンメダイと間違えられることがあります。しかし、キントキダイ科の魚はスズキ目に属する魚なのに対して、キンメダイ科の魚はキンメダイ目に属するため分類学的に目レベルで異なるのです。
両グループは形態も異なり、キントキダイ科の尾びれはキンメダイ科のように大きく2叉しないことや、キンメダイ科は背びれの棘が多いことなどで容易に区別することが可能です。
価格においても違いがあります。キンメダマシを除くキンメダイ科の魚は言わずと知れた超高級魚ですが、大型のチカメキントキを除くキントキダイ科の魚は比較的安価で取引されます。
味においてもキンメダイは脂の乗りがよく甘みが強い魚ですが、キントキダイではキンメダイのような脂ののりはなくあっさりしつつも旨味のあるしっとりとした味わいです。
このように似た環境に姿が似た魚がいるとつい混同していましますが、よく観察すると色々な違いを見つけることができます。キントキダイはキンメダイと比較すると広く流通しないものの比較的安価かつ味が良いので、これから人気が出るかもしれませんね。
(サカナト編集部)