海洋研究開発機構(JAMSTEC)を代表研究機関に実施されている深海調査プロジェクト「D-ARK」。
深海の生物多様性を解明すべく、大東島周辺海域を中心に調査を行ってきた同プロジェクトでは、ROV(無人探査機)を駆使した調査により、日本初記録となるホラアナヒスイヤセムツ、キサンゴキサンゴなどが報告されています。
そうした中で、研究チームは2025年7月~8月に行われた調査航海で、南大東島の水深760メートルからハワイ固有種と考えられていたアカグツ科魚類を発見したのです。
この研究成果は「Species Diversity」に掲載されています(論文タイトル:First northwestern Pacific record of the batfish Solocisquama erythrina (Actinopterygii: Ogcocephalidae) from Minamidaito Island, southern Japan)。
深海の生物多様性を解明する「D-ARK」
「D-ARK(Deep-sea Archaic Refugia in Karst)」はJAMSTECが代表研究機関となり、琉球大学、いであ株式会社、株式会社FullDepth、新江ノ島水族館を含めた5機関を中心としたプロジェクトです。
南大東島(提供:PhotoAC)このプロジェクトは、深海における生物多様性を明らかにすべく様々な取り組みを行っています。
主な調査地は海底洞窟を有する大東島周辺海域。この環境には未知の未知の生物多様性が潜んでいることが予想されていた一方、調査の難しさから実態は謎に包まれていたのです。
そこで活躍しているのが、ROVやベイトカメラ。これらを駆使することで、海底の生物の採集や撮影に成功しています。
続々見つかる新種・日本初記録種
これまで「D-ARK」では、多くの成果を上げています。
無脊椎動物においては、ダイトウヒメクマノアシツキやダイトウキノボリヒモムシといった新種を発見。魚類では日本初記録種となるホラアナヒスイヤセムツ、キサンゴカサゴが見つかっています。
今回、南大東島の海底から採集されたアカグツ科魚類も、日本初記録種として報告されました。
ハワイと大東島で共通した種が生息
2025年7月~8月に実施された調査航海で得られたアカグツ科魚類は、水深760メートルの海底斜面で発見されました。
さらに、研究チームはこの魚の採集にも成功。研究の結果、イガフウリュウウオ属の Solocisquama erythrina に同定されました。薄い赤色の体色や鱗の先端が3、4叉に分かれた棘が1本あることなどが特徴とされています。
本種の記録は、これまでハワイ諸島周辺海域の水深622~872メートルに限られており、同海域の固有種と考えられていました。そのため、大東島から得られた標本は日本初記録であると当時に、ハワイと大東島の深海で共通の魚が生息していることを強く支持するものとなったのです。
同様の分布パターンを示すものとして、2025年に報告されたホラアナヒスイヤセムツが知られています。
また、Solocisquama erythrina は急峻な岩場の隙間に僅かに砂が溜まった場所で発見されたことから、本種が狭い砂地環境を好んでいることが示唆されてました。
島にすむアカグツで<シマグツ>
日本初記録種である Solocisquama erythrina は、これまで標準和名がありませんでした。
そこで、本研究では、新たに「シマグツ」という標準和名が提唱されています。アカグツ科魚類の和名でよく見られる「グツ」はヒキガエルの地方名に由来すると考えられているようです。
また「シマ」は本種がハワイや大東島といった島に生息することに因んでいます。
今後もD-ARKから目が離せない
今回の研究によって従来、ハワイ諸島周辺海域の固有種と考えられていた Solocisquama erythrina が日本初記録種として報告され、標準和名「シマグツ」が提唱されました。
今後もD-ARKによって、新種や日本初記録種が発見されることが期待されています。
(サカナト編集部)