ジンダイドジョウはかつて三重県伊賀市に生息していたとされるドジョウ属の魚です。
本種は1940年代から個体数を減らし、2000年代に行われた調査でジンダイドジョウの特徴を持つ個体は採集されていません。
一方、2000年代以降は遺伝学的研究により、ドジョウType Iが明らかに。先行研究では、ドジョウType Iとジンダイドジョウが同じ分類群である仮説も示されました。
しかし、ジンダイドジョウの標本はDNA解析ができず、淀川水系でもドジョウType Iの分布が遺伝学的に確認されていません。
そうした中で、近畿大学の北川忠生教授らの研究グループは、環境DNAにより伊賀市周辺にドジョウType Iの遺伝的特徴を持つ集団が生息している可能性を調査。ドジョウType Iとジンダイドジョウの関係を検証しました。
この研究成果は『Scientific Reports』に掲載されています(論文タイトル:Environmental DNA supports persistence of the thought-to-be-extinct Japanese freshwater fish ‘Jindai Dojo’ and reveals its conspecificity with an Eastern Japanese relict species)。
幻の魚「ジンダイドジョウ」
ジンダイドジョウはかつて三重県伊賀市に生息していたドジョウ属の魚です。
本種は1940年以降に乱獲や農薬によって個体数を減少させたほか、一般的なドジョウとの交雑が進んでしまったと考えられています。そのため、2000年代に実施された調査でもジンダイドジョウの姿は確認されていません。
伊賀市の風景(提供:PhotoAC)一方、2000年代は遺伝学的研究により、一般的なドジョウの中に外見上区別が難しい隠蔽種「ドジョウType I」が明らかになっています。さらに、2025年の研究では、三重県総合博物館に保存されているジンダイドジョウ9標本を調査し、ドジョウType Iとジンダイドジョウが同種である仮説が示されました。
しかし、ジンダイドジョウの標本はホルマリンで固定されており、DNA解析をすることができません。また、伊賀市を含む淀川水系からドジョウType Iの分布は遺伝学的に確認されていませんでした。
環境DNAでドジョウType Iを探す
今回の研究では伊賀市周辺にドジョウType Iの遺伝的特徴を持つ集団が現存する可能性を調査し、ドジョウType Iとジンダイドジョウの関係を検証しました。
まず、研究グループは伊賀市のその周辺の33地点でドジョウType IのDNAの探索を実施。環境DNAサンプルとして採水を行い、ドジョウType IのDNAを特異的に検出する分析法を用いた結果、33地点中6地点で陽性反応が得られています。
さらに3地点は、かつてジンダイドジョウが生息した新堂地区だったとのこと¥。また、ジンダイドジョウの採集記録のない、鞆田川流域の1地点、久米川流域2地点からもDNAが検出されています。
ドジョウType Iとジンダイドジョウ DNA解析へ
次に研究グループは、検出されたDNAがドジョウType Iに由来するのか調べるため、6地点8資料についてDNAの塩基配列の解析を行いました。その結果、すべての配列がドジョウType Iの配列と最も高い類似性を示したといいます。
さらに既知のドジョウType IのDNA配列と比較したところ、今回検出された遺伝的系統が、日本海側のサブクレードJ(福井県敦賀市や三方湖周辺から確認されている遺伝的系統)に属することが判明。この結果は複数の淡水魚の系統地理学的パターンと整合するものでした。
伊賀市周辺で検出されたDNAがドジョウType Iの特定の系統に属することが示されたことから、ジンダイドジョウとドジョウType Iが同じ分類群であるという仮説を支持する結果となったのです。
ジンダイドジョウはまだ生き残っている?
今回の研究によって、かつてジンダイドジョウが生息していた地域を含む6地点からドジョウType IのDNAが検出されました。検出された地域には、ジンダイドジョウの採集記録のない久米川流域なども含まれています。
この結果は、ジンダイドジョウに由来する系統がまだ生き残っている可能性を示すものです。一方、今回の調査のみでは安定した個体群が存在するのか、さらには検出されたDNAが交雑していない在来個体に由来するのかまでは不明とのこと。
今後、久米川流域を含む伊賀市、淀川水系で環境DNA調査と捕獲調査をすることで、ジンダイドジョウの現在の分布や個体群の遺伝的な状態を明らかにすることが重要とされています。
(サカナト編集部)