珍しい魚や美しい魚を見て、「この魚をこのまま残したい」と思ったことはありませんか?
魚を長期保存するため「標本」として残す手段がいくつかあります。この記事では、魚の標本にはどんな種類があって、それぞれどのような特徴があるのかをご紹介します。
魚の標本は何のために残すのか?
標本を残す目的は、研究・教育・資料として使用するため、見ることで学ぶ・楽しむためなど多様です。
では、博物館や水族館などで目にする代表的な標本「液浸標本」「剥製標本」「骨格標本」はどう使い分けられているのでしょうか。
組織が分かる「液浸標本」
液浸標本は、密閉された保存瓶の中で個体を溶液に浸して保存する標本です。保管状態がよければ半永久的に保存できると言われています(標本の保管方法ー国立科学博物館)。
組織を取り出すことができるためDNAの情報が分かり、資料として様々な研究に使用できます。時間と共に変色をしていきますが小さなもの、柔らかいものも保存ができます。
姿が分かる「剥製標本」「樹脂標本」
魚の「色」だけは、どうしても標本として残すことができず、写真でしか残せないと言われています。剥製標本は魚の皮を利用し、生きた状態の色に着色することもあり、元の姿を伝える標本です。
皮以外の組織は残らないので主に「見る」資料となります。
レジンで固める「樹脂標本」は多面的に綺麗に見え、樹脂で保護されていることで細かな鰭なども扱う際に壊れる心配がなく、手に取って観察できるという特徴があります。一度樹脂で固めたら封入物を触ったり取り出すことはできません。
形や身体のしくみが分かる「骨格標本」
骨格標本は骨のみを残した標本。骨格がしっかりした生物に適していて、骨格から身体のしくみが分かり分類学に用いられることが多いです。全身骨格標本の他に部分の標本(顎骨標本、歯の標本など)もあります。
小型の魚類で解体が難しいものには、骨、鰭に着色をする「透明骨格標本」が適しています。筋肉も残っていますが、筋肉の組織は透明化され、骨格のみが分かりやすいため骨格標本と呼ばれています。
標本の未来は? 内臓まで丸ごと残せる標本も登場
先にあげた標本以外にも、ドイツで開発された「プラスティネーション標本」が近年見られるようになりました(1995年に国立科学博物館にて医学用のプラスティネーション標本が初めて一般公開「特別展 人体の世界 ー国立科学博物館」)。
これは脂肪をプラスチックに置き換えて作る標本で、手で触ることができて内臓まで丸ごと残せます。今後は目にする機会が増えるかもしれません。
また、技術の発達により、将来的に今まで見えなかった事実が過去の標本から分かる日が来ることでしょう。そのためにもそれぞれの時代の生き物を「未来のため」に残しておくことは大きな意味があるのではないでしょうか。
(サカナトライター:ミドリフサあんこ)