「シャチ」といえば、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。
黒と白のスタイリッシュな模様のほか、「killer whale(殺し屋クジラ)」とも呼ばれることから「かっこいい」「強そう」という印象を持つ人も多いかもしれません。
そんなシャチは、野生では群れを作って暮らしています。
私は以前、かっこいいシャチたちを率いているのは「さぞかし強いオスのシャチなのだろう」と思っていたのですが──トップに君臨していたのは、実はメスのシャチでした。
強い絆で結ばれたシャチの群れ
シャチはハクジラ亜目・マイルカ科に属している生き物で、クジラやイルカの仲間です。
高い知能を持っており、「ポッド」と呼ばれる群れを作って生活します。
知床に訪れるシャチのポッド(提供:PhotoAC)ポッドのメンバーは、血縁関係のあるシャチたち。
そして2021年に公開された論文(Family feud: permanent group splitting in a highly philopatric mammal, the killer whale (Orcinus orca))によると、そのリーダーは記録されている限りすべてメスだったそうです。
野生のシャチたちは、このリーダーを中心に助け合いながら暮らしています。協力して狩りをするだけでなく、メスシャチたちは獲物を仲間に分け与えることもあります。
また、頭数が増えてくると、経験豊かなメスのシャチと数頭の仲間がそれまでのポッドを離れ、新しいポッドを作ることもあるようです。
甲斐甲斐しく群れの世話を焼くシャチのメス。一方で、シャチのオスは群れの仲間に貢献することはあまりないようです。
日本の水族館にも偉大なメスシャチがいる
「群れの面倒をみる」という立派な役割を果たしている野生のメスシャチ。日本の水族館にも負けず劣らず立派な役割を果たしているメスのシャチがいます。
それが2026年8月現在、兵庫県神戸市の水族館「神戸須磨シーワールド」にいる「ステラ」です。
日本では、神戸須磨シーワールドのほか、「名古屋港水族館」と「鴨川シーワールド」の計3館でシャチを飼育。ステラ以外に5頭のシャチがいますが、なんとこの5頭は全てステラの子孫なのです。
シャチのステラ(奥)とその子リン(手前)(提供:PhotoAC)つまり、私たちが複数の水族館でシャチを見ることができるのは、ステラのおかげと言っても過言ではありません。
飼育下でたくさんの子孫を残すという、とっても大きな功績を残してくれたステラ。これからも元気に長生きしてほしいものです。
生きものたちの生活を覗いてみよう
優しく、そしてたくましく仲間を支えるメスのシャチ。自分以外のシャチを温かく見守るその姿に、私も見習いたいと感じました。
海には、群れで暮らす生きものもいれば、単独で成長する生きもの、異なる種類の生きものに支えられて暮らす生きものもいます。それぞれが異なる生き方を持ち、自然の中でたくましく生きています。
水族館や海で生きものを観察するときは、彼らがどのように暮らしているのかにも目を向けてみてください。自分たちの生き方と比べてみると、新たな発見や気づきがあるかもしれません。
(サカナトライター:うどん粉)