魚の世界には、我々が想像する以上に多様な性のあり方が存在します。
この記事では、厳しい環境の中で子孫を残すための興味深い魚の性のあり方についてご紹介します。
魚の多種多様な性
魚類の性の多様性は驚くべきものです。雄雌の区別が明確でない種、性別を変える能力を持つ種、あるいは複数の性を持つ種など様々なタイプがあります。
メスからオスへ変わる「雌性先熟」
メスからオスに変わるものを「雌性先熟」といいます。
1匹のオスがメスを独占する一夫多妻制では、弱いオスは子孫を残すことができません。 そこで、体が小さいうちはメスとして子孫を残し、大きくなったときにオスとなり子孫を残すのです。
このタイプの例として、クリーニングフィッシュとして知られるホンソメワケベラがいます。

ホンソメワケベラ(提供:PhotoAC)
ホンソメワケベラは、生まれた時はオスが全く存在しない魚です。1番大きな魚がオスとなり、1匹のオスと多数のメスが1つのグループで生活します。そして、オスがいなくなると、今度は残ったメスの中から1番大きい個体がオスに転換します。
オスからメスへ変わる「雄性先熟」
反対にオスからメスに変わるものを「雄性先熟」といいます。こちらは一夫一妻制の生き物に見られます。このタイプは体の大きいメスが産卵能力が高く、小さいうちはオスとして生き、大きくなったらメスとなります。
このタイプの例として、クマノミがいます。

クマノミの親子(撮影:百葉)
クマノミは、生まれた時は「両生生殖腺」という卵子と精子どちらもつくれる機能をもち、メスでもオスでもない状態です。
成熟していき集団の中で最も大きい個体がメスになり、次に大きい個体がオスとなります。メスがいなくなると、2番目に大きかったオスがメスとなり、3番目の大きさの個体がオスとなります。
色も変わる「雄性先熟」のハナヒゲウツボ
ハナヒゲウツボも「雄性先熟」です。ハナヒゲウツボが特徴的なのは、大きさや性だけでなく、色も変わるという点です。

ハナヒゲウツボ(撮影:百葉)
幼魚のときは黒色で、成魚になると青色に変化し、さらにメスになると黄色に変化します。 この黄色になったメスは、なんと、産卵したあと一ヶ月以内に死亡してしまうと言われています。そのため、黄色の個体を見ることはとても珍しいのです。
魚の性について調べよう
魚たちは厳しい海の世界で、より強い遺伝子を残すための生存戦略を持っています。今回紹介した魚以外にも魚の性については興味深い事実や研究があるので、気になった方はぜひ調べてみてください。
(サカナトライター:百葉)