サカナに特化した本屋・SAKANA BOOKS(サカナブックス)で今年8月からスタートした水生生物クリエイター向けの棚貸しサービス『SAKANA APARTMENT(サカナアパートメント)』。
今回はSAKANA APARTMENTの306号室に現在入居中のはたなかちひろさんに、水生生物への想いや活動について語っていただきました。
活動前は魚屋に10年以上勤務
━━━現在SAKANA APARTMENTではさまざまな水生生物グッズを置いていただいています。普段はどのような作品をつくったり、活動を行ったりしていますか?
活動自体は今年から始めたばかりで、今はイラストを描いたり、つくったグッズを販売するECサイトの運営をメインでやっています。あとは、「魚真」(東京都内9店舗を経営する魚料理がメインの居酒屋)という飲食店で、『魚眞瓦版』を店内に掲示してもらっているんですけど、これは月に1回くらいのペースで発行しています。
飲食店のスタッフの方から「今はこのサカナがいいよ」とか「これからこのサカナが旬だよ」みたいなことを聞きながら、「じゃあ、おすすめするのはこのサカナかな」ということを考えて、構成や文も含めて制作しています。
他にも、Tシャツを販売したり、似顔絵を描いたり、名刺に使える似顔絵を組み合わせたイラストの依頼を受けたりしていますね。
━━━具体的にそういう活動はいつ頃から始めたのですか。
魚眞瓦板は今年の1月頃から始めました。魚真さんの大元が卸の魚屋をやっているんですけど、実はそれまでその魚屋で11年ほど勤めていたんです。
最初、働き始めたときはお魚を捌くのも上手くなかったんですが、いろいろ教えていただきながら、魚のことを学んでいく感じでした。その頃から、ほぼ毎日お店の看板にお魚のイラストとオススメポイントや料理法を書かせていただいていて、10年以上続けていました。
その延長で、飲食店の方でもこういうのをやらせていただけないですか?というお話しをさせていただいた感じです。
イワシの群れとの運命的な出会い
━━━現在の活動を始められる前から魚に触れる機会が多かったんですね。何か魚を好きになるきっかけみたいなものはありましたか?
小さい頃は、なんとなくサカナを食べるのが好きだな、くらいでした。
大きなきっかけは10代の終わり頃に、水族館でイワシの群れが泳いでいるのをみて感動して、ギュンッと心臓をつかまれるような感覚になって(笑)。それから「もっと魚のことを知りたいし、もっと魚に近づきたい」って思うようになりました。
イワシの群れと出会ったのが、映像制作の専門学校に通っていた頃なんですけど、卒業後はそのまま映像関係に就職して、劇映画の制作部やドキュメンタリーを撮っている監督の編集補助などをしばらくしていました。
たまたま、仕事の切れ間でお寿司屋さんで働いたらそれが楽しくて(笑)。そこからほぼずっと魚を追いかけています。
━━━イワシの群れが運命的な出会いだったんですね。ちなみに、一番好きなサカナは何ですか?
実は一番好きな魚はイサキなんですよね。すごくおいしいのに、ちょっと地味だしちょっとマイナーなお魚で(笑)。
魚をすごく好きになった後に、イサキの美味しさを知って、地味だけどすごいお魚だなって思って、大好きになりました。
水生生物クリエイターとしての思い
━━━大好きなイサキや魚の作品を通して、伝えたい思いや制作へのこだわりはありますか?
こだわり…そうですね。魚の世界ってすごく広いじゃないですか。いろいろな楽しみ方があって、絵を描くのもそうですけど、採集が好きな人もいるし、水族館が好きな人もいるし、剥製を作るのが好きだったりとか食べるのが好きだったりとか…。本当に広い世界なので、自分が知らないことや腑に落ちていないことは、知っているように言っちゃいけないなっていうのは気を付けています。
ECサイトだと買っていただいた方と直接お話することは難しいんですけど、SNSにアップしてくださったり、販売しているお店の方から「こういう方が買ってくれたよ」みたいなお話を聞いたりするとやっぱりうれしいですね。
━━━最後に、はたなかちひろさんの今後の展望を教えていただけますか。
今後の展望というか、思いなんですけど、今は「魚のことをもっと知りたい」という気持ちが強いです。
これまで私が知っていたのは、”お店の中で売っている魚”というのがほぼ全てだったんですけど、絵とかグッズだけじゃなくて、今後は映像の方にも手を伸ばして、魚の魅力を伝える活動をしていけたらなと思っています。でも、それには自分が魚のことを知らないと伝えられないので、まずは自分が魚のことをもっと知りたいと思っています。
今年はふぐ免(ふぐ調理師免許)も受けたんですけど、フグだけでもなんとなく知っていただけで、全然知らないことばかりだなと改めて思い知りました。そういったことからも、知識を深めたいなとは思っています。もともとふぐ免に関しては憧れがあって、そのために調理師免許も取ったんですけど、今年からは受験資格が変わって調理師免許いらなくなっちゃったんですよね。だけど、ずっと憧れだったしせっかくならと思って受けてみました。
実際の試験では、並べたフグの種類を当てる種類鑑別の問題がすごく難しくて…これは、凍らせて何年も経っているんじゃないかっていうくらい退色しているのとかあったんですけど、フグの教本ってあんまり写真が載っていないんです。だから、フグの種類鑑別用の本とかあったらいいかなとか思ったりしています。
今は発信する立場として自分が魚の知識を身につけて、自分が得たものを社会に還元できたらなと思っています。
SAKANA APARTMENT(サカナアパートメント):本屋・SAKANA BOOKSで2023年8月から行っている棚(部屋)貸しサービス。水生生物をモチーフに創作活動を行うクリエイターのグッズや絵が並ぶ。現在、空き部屋あり(入居者募集中)。
(サカナト編集部)