海洋生物が棲む海は地球の7割ほどを占めているといわれていますが、それは表面積だけの話。
海はとても深く、それぞれの深さに多様な生き物が生息しています。この記事では、海を構成する5つの層と、そこに住む代表的な生き物たちについて紹介します。
海は主に5つの層に分かれる
海(海洋層)は大まかに5つに分かれています。
まず、最上層にあたる「表層」。次に2層目の「中深層」、3層目の「漸(ぜん)深層」、4層目の「深海層」、5層目の「超深海層」です。
3層目の「漸深層」から下層はほとんど光が届きません。
(実は身近な地球最後のフロンティア“深海” - 農林水産省)
光が消えていく深海の不思議
海が深くなるにつれて光の量が減ることで、海中には赤や黄色の光が届かなくなります。これは、水が太陽の光を吸収してしまうからです。
「中深層」までたどり着く光の波長は青色のみで、深海に棲む生物のほとんどは青しか見えません。「中深層」に棲むキンメダイが赤いのも、赤い光が見えにくいことを受けた保護色ではないかと考えられています。
それぞれの海層に棲む代表的な生物
この項では、5つに分けられたそれぞれの海洋層に生息する代表的な生物を紹介します。
私たちにとって最も身近な「表層」
表層は海水面から水深200メートルのあたり。代表的な生物はイルカ、ウミガメ、イワシ、サバ、クマノミ、エンゼル・フィッシュなど。珊瑚礁に棲む魚や、食卓に並ぶ青魚、水族館で見られる海獣などが生息しています。
表層までは太陽の光が届くため、プランクトンや海藻類も豊富で多くの生物が暮らしやすい環境です。
「中深層」にはよく食卓でみるサカナも
中深層は水深200メートルから1000メートルあたりで、代表的な生物はメバチマグロ、タラバカニ、ヒカリキンメ、アンコウ類など。甲殻類や発光する魚も多く生息しています。
この層まで届く太陽光は1%ほどで、オキアミやバクテリアを餌にしている生物が多いです。昼間は深海に棲む魚が夜間に浅海に餌を求め「日周鉛直移動(にっしゅうえんちょくいどう)」を行うこともあります。
「漸深層」にはよく知る深海生物たちが
漸深層は水深1000メートルから3000メートルあたりで、代表的な生物はマッコウクジラ、ダイオウイカ、フクロウナギなど。大型の深海生物が多く生息しています。
この辺りになると、海水温は1〜5℃と低くなり、水圧も高く厳しい環境となります。餌もほとんどなく、光も届かないため、発光し餌を集める魚も多くいます。
また、クジラなどの大型生物が水深1000メートルから呼吸のために海水面へ移動することもあります。大きな鉛直移動によって海中の循環が起こることを「ホエール・ポンプ」といい、海の環境を保つ大きな役割を担っています。
「深海層」厳しい環境に適応する工夫
深海層は3000メートルから5000メートルあたりで、代表的な生物はセンジュナマコ、メガマウス、オウムガイ、ミツクリザメなどです。
水温も氷点下、水圧も数十トンとなり、圧力に耐え、凍らないカラダが必要となります。そのため、粘液を出して体を保護したり、圧力に耐えやすいよう密度の高い硬い骨をもたず、脂肪分と水分の多い体のつくりをしていたりする生物が多く生息しています。
小さな生き物たちがすむ「超深海層」
超深海層は5000メートル以上の深い海で、マリアナ海溝などがそれにあたります。こんなところに生物なんているの?と言いたくなりますが、2015年の調査でエビ類や有孔虫(ゆうこうちゅう)という小さな虫類が生息していることがわかっています。
また、スネイルフィッシュという名前でよく知られているシンカイクサウオもこの層に生息しています。
超深海ともなると、高い水圧に光も届かない氷点下の世界。ですが生物が棲んでいるなんて、生物の適応能力はまだまだ未知の領域なんですね。
(超深海・海溝生命圏を発見―マリアナ海溝の超深海水塊に独自の微生物生態系―-JAMSTEC)
(サカナトライター:小園梓)