日本人であれば知らない人はいないであろう魚「ドジョウ」。
この小魚は池沼や水田で見ることができる身近な生物でした。そのため、日本では古くからドジョウが庶民の味として親しまれており、東京や福岡をはじめとする日本各地でドジョウの食文化が発展し、今も一部の地域で食文化が残っています。
しかし、現代におけるドジョウは食用として馴染みの薄い魚であり、食べたことのない人がほとんどだと思います。では、なぜドジョウを食す機会が減ってしまったのでしょうか?
ドジョウとは
ドジョウとはコイ目ドジョウ科の総称、もしくは標準和名「ドジョウ」を指す言葉です。
ドジョウの名の由来は諸説あり、土から生じる「土生」、泥に棲む魚を意味する「泥津魚、泥棲魚」が転訛したと言われています。この他にもドジョウの由来とされる説は複数あるものの、いずれもドジョウが泥や土に棲むことに由来したものが多いようです。
これらの説からも読み取れるようにドジョウは池沼や水田で多く見られる魚で、稲作が盛んな日本ではとても身近な魚であったと考えられます。
分類学的なドジョウ
世間一般でドジョウといえば標準和名「ドジョウ」のイメージですが、実に多くの種類を含んだグループということが判明しています。
近年、ドジョウ科の分類学的な研究が進んでおり、かつて1種とされていたものが複数種に分かれることも珍しくありません。特にシマドジョウ属は多くの種・亜種を含んでおり、中には未記載種や学名が決まっていないものも多く存在します。現在では30近くの種・亜種のドジョウ科魚類が知られています。
また、シマドジョウ属の中にはトサシマドジョウやタンゴスジシマドジョウのようにごく限られた水域のみに生息する固有種も多く、都道府県の条例で採集が禁止されているケースも少なくありません。
ドジョウを採集する際には条例で採集が禁止されていないかよく調べましょう。
ドジョウと食文化
ドジョウの食文化の記録は江戸時代からあったとされていますが、極めて身近な魚であったことから江戸以前から食されていたとも考えられています。
ドジョウを使った郷土料理は日本各地に存在し、福岡県の「柳川鍋」、金沢の「どじょう蒲焼」、浅草の「どじょう鍋」は非常に有名。この他にも焼いたドジョウを粉にして使う宮城県の「ふすべ餅」、富山町の「どじょう寿司」が伝承されています。
また、各地で料理に用いられてきた種はドジョウが多いものの、岐阜県ではシマドジョウ属のアジメドジョウを食べる文化が古くから存在します。
古くは庶民の味として親しまれていたドジョウですが、現代では食べる機会も減り、ドジョウそのものの価格も高騰し気軽に食べられる魚ではなくなりました。
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