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アズキハタと呼んではいけない!

さて、キジハタの地方名「あずきます」ですが、サケ科のマス類との混同を避けるために「あずきます」ではなく、「あずきはた」という名前で呼んでしまうというケースもあります。

しかしこれはいけません。というのも、アズキハタというのはまた別のハタ科の標準和名であり、混乱を招くことがあるからです。

本物のアズキハタはこんな魚

アズキハタ(撮影:椎名まさと)

アズキハタ(学名 Epinephelus leucogrammicus[Valenciennes, 1828])はキジハタと同じくスズキ目・ハタ科・アカハタ属の魚類です(従来は別属ともされた)。

体側に赤い斑点がありキジハタによく似ていますが、体高が低く体側には白い縦線が複数入るという特徴があり、同属の他のハタと見分けることができます。インド‐太平洋のサンゴ礁域に生息している熱帯性の魚類で、国内では琉球列島と小笠原諸島にのみ生息します。

「沖縄さかな図鑑」では「シガテラ毒を有することがあり市場価値はやや低い」とあります。ただし実際に食して見ると美味しい魚でした。

アズキハタは書籍によっては山口県日本海沿岸でも漁獲されている(例,日本産魚類検索 全種の同定 第三版.東海大学出版会,2013など)、とありますが、おそらくキジハタの間違いであると思われます。

実際に山口県の日本海沿岸の魚の標本や画像を集めて報告した「証拠標本および画像に基づく山口県日本海産魚類目録(園山貴之・荻本啓介・堀 成夫・内田喜隆・河野光久著・鹿児島大学総合研究博物館、2020年)」の中にもアズキハタは収録されていません。これも混同による混乱の例といえるでしょう。

標準和名で覚えよう

上記のように魚の地方名や別名のなかには別魚種と混同しやすいものがあり、それが原因で混乱を招くことがあります。それを避けるのには、魚を標準和名で覚えるのがいちばんです。

信頼できる魚図鑑を見ながら標準和名を覚えましょう。

(サカナトライター・椎名まさと)

参考文献

榮川省造.(1982)、新釈 魚名考、青銅企画出版、607p

長澤和也・村瀬拓也・園田純雄・本吉宏記(2021)、鹿児島湾産オオモンハタに寄生していたイカリムシモドキ: 鹿児島県からの第 2 記録、 Nature of Kagoshima 48: 133?137

日本魚類学会編(1981)、日本産魚名大辞典、三省堂、848p

下瀬 環(2021)、沖縄さかな図鑑、沖縄タイムス社、208p

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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