スイゲンゼニタナゴは岡山県の一部と広島県福山市の限られた地域に生息する淡水魚です。そんなスイゲンゼニタナゴですが、ある理由により存続の危機にあります。
この記事では、スイゲンゼニタナゴがどんな魚なのか、また、スイゲンゼニタナゴが存続の危機にある理由をお伝えします。
スイゲンゼニタナゴは日本最小のタナゴ類
スイゲンゼニタナゴとは、コイ目コイ科タナゴ亜科に属する淡水魚の一種。全長は約5センチと、日本のタナゴのなかでは最も小型です。体側には青緑色の縦条が入ることが特徴です。
名前の由来は、記載された魚の採取地である韓国の水原市です。岡山県では「カメンタ」という地方名でも呼ばれているそう。
スイゲンゼニタナゴとよく似た亜種にカゼトゲタナゴという魚もいます。スイゲンゼニタナゴよりやや大きいです。
国内の分布域
国内では、かつて兵庫県千種川、岡山県、広島県芦田川に生息していました。しかし、兵庫県では絶滅し、現在は岡山県の一部と広島県福山市のみに残存しています。
国内希少野生動植物種に指定されている
スイゲンゼニタナゴは、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に指定されており、学術研究等の目的で環境大臣が許可した場合を除き、捕獲や殺傷、譲渡や譲受、販売目的での陳列、飼育が原則禁止されています。
近年、書籍やインターネット上では、スイゲンゼニタナゴを「カゼトゲタナゴ山陽個体群」として表記している例もみられるようです。ペットショップやネットショップでも「カゼトゲタナゴ山陽個体群」と表記してスイゲンゼニタナゴが販売されている事例がありますが、これらの販売・購入・飼育などはもちろん違法なので、注意が必要です(参考:スイゲンゼニタナゴについて-倉敷市)。
今、種の存続が危うい! 外来タナゴの脅威
先述の通り、スイゲンゼニタナゴは兵庫県では既に絶滅しており、現在は岡山県の一部と広島県福山市にのみ生息しています。しかし、この限られた生息場所でも生息数を減らしており、現在は環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧IA類、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いものとして指定されています。
生息域で外来タナゴ類・外来種を確認
そんな中、環境省中国四国地方環境事務所は2024年2月9日、「岡山県内におけるスイゲンゼニタナゴの危機的状況について(外来タナゴ類の確認について)」という報道発表をしました。
その内容は、国内由来の外来タナゴ類(図鑑等に記載されていない不明種 Rhodeus sp.、中国大陸と朝鮮半島に自然分布するカラゼニタナゴ)と、国内由来の外来種「カゼトゲタナゴ」の生息がスイゲンゼニタナゴの生息域で確認されたとするものでした。また、その後スイゲンゼニタナゴと外来タナゴ類の交雑個体も確認されたことが発表されています。
外来タナゴ類の生息分布域は年々拡大しており、スイゲンゼニタナゴとの交雑個体も増加傾向にあるといいます。形態や生態の似たスイゲンゼニタナゴと外来タナゴ類の競合や交雑により、スイゲンゼニタナゴの存続が危ぶまれています。
飼育後の放流が原因か 見た目で区別するのは困難
カゼトゲタナゴはスイゲンゼニタナゴによく似ています。外来タナゴ類もスイゲンゼニタナゴとそっくりな特徴を持っていることから、見た目での区別は難しいです。カゼトゲタナゴなどは観賞用にペットショップなどで販売されることが多く、自然に侵入するのはほぼ困難であることから飼育後に放流された可能性が高いと思われます。
スイゲンゼニタナゴと外来タナゴ類を見た目で判断することは困難であり、誤ってスイゲンゼニタナゴを捕獲する可能性があることから、外来タナゴ類やその交雑個体の捕獲も避けるように注意を促しています(岡山県内におけるスイゲンゼニタナゴの危機的状況について-環境省中国四国地方環境事務所)。
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