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アナゴ科の魚の分類と人間との関係 食用から水族館のスターまで?

アナゴ科の魚は日本からは3亜科、およそ30種が知られています。

しかしながら食用にされるのは多くがクロアナゴ亜科のマアナゴで、他のアナゴ科魚類はあまり食用として利用されていません。

中には独特な生態を有し、水族館のスターにのしあがった魚もいます。今回はアナゴ科魚類についてご紹介します。

アナゴ科Congridaeとは

アナゴ科はウナギ目に含まれる魚類のいちグループです。日本産のウナギ目魚類には17科があり、そのうちの1科です。

その特徴としては尾鰭があること胸鰭があること(チンアナゴ亜科では胸鰭はないか、あっても小さい)、下顎は上顎よりも前に出ないこと(チンアナゴ亜科ではわずかに下顎が上顎の前に出る)、前鼻孔は吻先端付近にあること後鼻孔は吻側面に開くこと肛門は体の中央付近にあることなどの特徴によって、日本産のほかのウナギ目魚類のほかの科のものと見分けることができます。

アナゴ科の魚も3つの亜科に細分されており、それぞれ大分異なる外見をしています。

「アナゴ」と名前にあるけれど

イラコアナゴ(ホラアナゴ科)「くろはも」とも呼ばれるがハモ科でもない(撮影:椎名まさと)

名前に「アナゴ」とついているものの、アナゴの仲間でないものがいます。

イラコアナゴ、ホラアナゴ、コンゴウアナゴなど(ホラアナゴ科)、ヒレアナゴ、セレベスヒレアナゴ、ミミズアナゴなど(ウミヘビ科、とくに尾鰭があるもの)、クズアナゴ、イトアナゴなど(クズアナゴ科)、イワアナゴなど(イワアナゴ科)、ハシナガアナゴ(ハモ科)などです。

クロアナゴ亜科 Congrinae

クロアナゴ属のマアナゴ

クロアナゴ属のマアナゴ(撮影:椎名まさと)

クロアナゴ亜科はアナゴ科の中でもっとも多くの種をふくむ亜科です。22属からなる大所帯で、日本には10属18種ほどが知られています。

特徴としては体は長いがチンアナゴほどではない、背鰭と軟条には分節がある、後鼻孔は眼中央前方、またはそれより上方にある (写真)などがあります。

マアナゴの後鼻孔(白い矢印)眼中央よりも上にある(提供:椎名まさと)

代表的な種はクロアナゴ属のマアナゴ Conger myriaster(Brevoort, 1856)です。マアナゴは側線孔部を囲むように白い斑点があり、その上方にも白い斑点があることにより、他のクロアナゴ属魚類と容易に識別できます。

東京や和歌山県では「はかりめ」とも呼ばれ、これは重量をはかる竿秤についていた白色の目盛りを、マアナゴの体側に並ぶ白色斑に見立てたもののようです。

蒲焼や白焼き、刺身などにもされ用途が広く、かつ美味な魚のため、アナゴ科の中でもとくに積極的に漁獲されています。分布も北海道積丹半島・噴火湾から九州南岸までほぼ全国に及びます。

クロアナゴ属にはほかにも、クロアナゴダイナンアナゴなど大きいものでは全長1メートルを超えるような巨大な種もおり、食用にされていますが、ツマグロアナゴギンアナゴといったやや深海にすむ小型種は残念ながらほとんど利用されていません。

ホンメダマアナゴ亜科 Bathymyrinae

ゴテンアナゴ属のゴテンアナゴ(撮影:椎名まさと)

ホンメダマアナゴ亜科は一見クロアナゴ亜科の魚に見えますが、後鼻孔が眼の中央よりも下方にあり、背鰭や臀鰭の軟条に分節がないのが特徴です。体はクロアナゴ属よりも短くて太いように思います。

この亜科は6属からなり、ゴテンアナゴ属のゴテンアナゴハナアナゴシロアナゴオオシロアナゴ、メダマアナゴ属のメダマアナゴが日本に分布していますが、オオシロアナゴとハナアナゴは同種である可能性もあるということです。

また、ゴテンアナゴ属の Ariosoma fasciatum(Gunther, 1872)と思われる種が最近日本でもダイバーによる水中写真によって確認されており、標本の採集が待たれます。

そのなかでも代表的な種がゴテンアナゴ Ariosoma anago(Jordan and snyder, 1900)です。マアナゴなどと比べややふと短い体で、眼の後方にうっすら暗色線がはいるのが特徴です。浅い海から水深160メートルほどの海底にまで見られ、底曳網などで漁獲されます。

このゴテンアナゴやハナアナゴは食用になり美味ですが、マアナゴほど食用としては重要視されていません。

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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