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トゲチョウチョウウオ Chaetodon auriga Forsskal,1775

房総半島のトゲチョウチョウウオ幼魚。橙色というか、赤い。(撮影:椎名まさと)

トゲチョウチョウウオはチョウチョウウオ科の中の普通種で、体側の後方が黄色く、背鰭に黒色斑があり、体側には斜めの帯が交差しているという色彩をもつチョウチョウウオです。

「トゲチョウチョウウオ」という標準和名は知らなくても、写真を見せたら「ああ、見たことある」という方も多いのではないでしょうか。

飼育されているトゲチョウチョウウオ。房総半島産(撮影:椎名まさと)

チョウチョウウオ科としては(比較的)飼育しやすく、水族館ではお馴染みの魚で、家庭の水槽でもトゲチョウチョウウオを13年飼育しているアクアリストもいるほどです。ただし、チョウチョウウオ科としては飼育しやすいとはいっても、やはりチョウチョウウオ科の魚ということで、病気対策などには気を付けなければなりません。

釣りあげたチョウチョウウオの成魚(撮影:椎名まさと)

トゲチョウチョウウオの成魚は鰭の軟条が少し伸びており、これが標準和名の由来となっています。インド~中央太平洋に広く分布し、南アフリカ東岸から南米エクアドル沖のガラパゴス諸島にまで分布していますが、紅海に生息するトゲチョウチョウウオは背鰭の目玉模様がなく、まるで別種のようです。

なお、写真1枚目の、房総半島で採集したトゲチョウチョウウオの幼魚は背鰭や臀鰭、体側後半がよく観賞魚店等で見られるトゲチョウチョウウオよりも強い発色で、赤色に近く見えます。これは採集した者だけが見られる特権ともいえ、飼育しているうちにオレンジ~黄色になります。

フウライチョウチョウウオ Chaetodon vagabundus Linnaeus, 1758

高知県で採集した稚魚(撮影:椎名まさと)

フウライチョウチョウウオはトゲチョウチョウウオによく似ている魚。体側の模様も色彩も、背鰭軟条部に黒色斑があるところもトゲチョウチョウウオにそっくりです。

しかしながら、成魚は背鰭から臀鰭にのびる黒い帯があり、目玉模様も消失、背鰭の軟条は成魚でも伸びないという違いがあります。


房総半島で採集したフウライチョウチョウウオの幼魚(撮影:椎名まさと)

フウライチョウチョウウオはチョウチョウウオに次いで磯で多く見られるチョウチョウウオといえるもので、毎年関東の潮だまりで高確率で見られる種ではありますが、臆病で意外と神経質なところがあり、成魚は性格がきつくなるともされています。

雑食性で餌はよく食べてくれますが、食が細く少なくとも幼魚はほかのチョウチョウウオとの飼育は避けたほうがよいかもしれません。

フウライチョウチョウウオの成魚。背鰭軟条は伸びず黒色斑もない(撮影:椎名まさと)

標準和名だけでなく英語名・学名も「風来坊」を意味します。鹿島灘以南の日本を含むインドー太平洋に広く分布していますが、紅海、アラビア海、ハワイ諸島など、本種が見られない地域もあります。

またインド洋ではインディアンバガボンドバタフライフィッシュという本種によく似ているものの、体の後半部が黒っぽいものも知られています。

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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