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SFの醍醐味

こうした未来の乗り物や描写こそまさにSFと言えますが、私の思うSFの醍醐味とはこうした創作物から実際に未来予測や考察を行うことができるという点です。

本作の中で、主人公であるアロナクス教授が「ラッコという生き物は近い将来絶滅してしまうだろう」と考察するシーンが出てきます。

ラッコ(提供:PhotoAC)

皆さんもお気づきの通り、この考察は現実とそうかけ離れてはいません。実際には人々の努力によりラッコは徐々に個体数を増やしていますが、もう少し遅れていたらアロナクス教授の言う通り、ラッコは本当に絶滅していたかもしれません。

ネタバレ回避のため多くは触れませんが、ここまでの説明の通り、ノーチラス号のような“未来の乗り物”も今は存在しますし、人種問題や戦争などの考え方も非常に先駆的です。100年以上前の小説を通して海洋環境の在り方や、それらに対する人々の在り方も見つめ直すことができるのです。

SFを通して未来を考える

『海底二万里』に限らずSF作品のすごいところは、こうした未来予測を行い、この先に待ち受けるであろう危機をどう乗り越えるかを考察できること、また様々な価値観・可能性を広げられることだと思います。

作者が本気で考えたSF考証と、そのSFが現実となった場合の価値観の変化・時代の変わり方、これらの考察力は凄まじいものがあります。

ただの創作物と侮るなかれ、全サカナ好きを虜にし、多くの人々の教科書にも成り得る『海底二万里』をぜひ一度手に取ってみてください。

(サカナトライター:みのり)

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みのり

みのり

センス・オブ・ワンダーを大切に

北里大学海洋生命科学部卒・元水族館飼育員。魚類・クラゲはもちろん、イルカの飼育も担当。非常に多趣味で、生き物観察やフィールドワークはもちろん、映画や読書、ゲームも好き。多趣味ゆえの独自の視点、飼育員視点を交えつつ、水生生物やそれを取り巻く自然環境、文化、水族館の魅力を発信していきます。

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