魚が初めて宇宙に飛び立ったのはいつだか知っていますか?
なんと、1973年に人類初の魚を使った宇宙実験が実施されています。それ以外にも、身近な魚たちが宇宙を体験して地球に帰還しています。
この記事では、宇宙で行われた実験と、帰ってきた魚たちのその後を紹介します。
1973年、魚が宇宙に行った日
1973年、米国初の宇宙ステーション「スカイラブ」が打ち上げられました。
この時に同乗した、カダヤシ目の小型汽水・海水魚である「マミチョグ」という魚が、宇宙に到達した初めての魚類です。
彼らは種の持つ高い環境適応力から選抜されたわけですが、この時、ある問題が起きました。
マミチョグたちは宇宙に着くなり、ぐるぐると回転(ルーピング)し始めたのです。せっかく宇宙まで連れて行ったのに、結局魚を使った実験は上手くいきませんでした。
魚も“宇宙酔い”する
魚類を使った宇宙実験のために、まず無重力に強い魚の選定が必要になりました。そこで白羽の矢が立ったのが、メダカです。
人の中でも“宇宙酔い”しやすい人としにくい人がいるように、品種の多いメダカなら宇宙酔いに強い品種もいるかもしれないと考えたのです。
急降下、急上昇を繰り返して無重力状態を作るという航空機実験を何度も行い、人類はついに宇宙酔いしないメダカを見つけ出しました。
宇宙で魚が教えてくれたこと
1994年には、日本人宇宙飛行士向井千秋さんとともに選ばれし4匹のメダカがスペースシャトル「コロンビア」で宇宙に旅立ちました。
オス2匹は「コスモ」と「元気」、メス2匹は「夢」と「未来(みき)」とそれぞれ名付けられました。
宇宙では、水棲生物飼育装置(Aquatic Animal Experiment Unit: AAEU)で4匹のメダカを飼育。スペースシャトルのクルーは、3日ごとに備え付けの給餌機構から餌を与えました。
また、14時間の明期と10時間の暗期の明暗サイクルをつくり、昼と夜を疑似的に再現。水温は24℃に保ち、宇宙でも地球と同じように生活ができるよう環境を整えました。
メダカは宇宙で産卵活動をするのか
この実験の目的は、宇宙でメダカが産卵活動をとることができるかどうかや、ふ化した卵が無事に発生できるか(受精からふ化までが正常に進行するか)を調べるためのものでした。
この実験は無事成功。無重力下で世界初となる脊椎動物の生殖の成功は、世界中で大きな話題になりました。そして生殖だけでなく、8匹の稚魚もうまれました。
この実験は、宇宙で魚類を養殖するといった未来の計画に新たな希望をもたらしたのです。
宇宙から帰ってきたメダカたちは無事回復
宇宙で産まれた卵は宇宙飛行中に無事孵化しました。
スペースシャトルで地球に戻ってきた親メダカたちは、はじめはバランス感覚がおかしくなったのか、水槽の底に沈んでしまいました。宇宙では尾びれを使うことが少なく、主に胸びれを使って泳いでいたそうで、その泳ぎ方では上の方へ上がることができなかったようです。
しかし数日後には回復し、正常に泳げたようです。また不思議なことに、宇宙生まれのメダカの稚魚たちは、地上に降り立って間もなく、普通に泳ぎだしたのでした。
「宇宙メダカ」は全国の小学校に配布
その後、彼らは「宇宙メダカ」という愛称で親しまれるようになりました。宇宙メダカは日本各地の小学校に配布され、現在も子孫を増やし続けています。
あなたの通っていた小学校にいたメダカも、もしかしたら宇宙メダカの血が流れているかもしれませんね。
宇宙メダカの実験が成功して以降、金魚やベタなど多くの魚たちが宇宙に飛び立っています。気になった方は、ぜひ調べてみてはいかがでしょうか。
(サカナトライター:桐田えこ)