オキアカグツを食べる
オキアカグツをふくむアカグツ科はあまり食用とされて来ませんでしたが、実は意外と美味な魚でもあります。実際に捌く時には包丁よりもキッチンバサミなどを使うのがおすすめです。
可食部は尾の部分の身のほか、腹部の身、胸鰭などで、体が棘状の突起に覆われておりアンコウなどよりも食べられる部位が少ないのが難といえそうです。内臓は肝臓や消化管なども食用にすることができます。
もっとも、あのような寄生虫が大量に出てきたら消化管を食する意欲を失ってしまう人がでてくるかもしれませんが……。
オキアカグツは味噌汁にして食べました。上記写真の尾部などにのこる棘が若干気になりましたが、それ以外は美味しいものでした。肝臓にも旨味があります。
利用されていない魚も積極的に食べてみよう
オキアカグツは主に底曳網漁業で獲れる魚です。底曳網漁業というのは大きな網を1そう、または2そうの船で引っ張り、海底の魚を獲るものですが、環境に与える負荷が大きいために、時期の規制があったり、網目の大きさも決まっていたりします。
しかし、網に入り、甲板に揚げられた魚がすべて利用されるわけではありません。甲板に揚げられた魚たちはスコップなどで海に戻されますが、もうすでに弱っていたり、死亡してしまっているのが大半なのです。
であれば、そのような利用されない魚も積極的に食用とすることがよいといえます。
日本に生息する魚で、一般の人が食用にする魚以外にもさまざまな魚が食用となり、フグ科のような毒のある魚やヨウジウオ科のような可食部がほとんどない魚以外はほとんどすべてが食用になるといってもよいでしょう。せっかく水揚げされても多くの魚が投棄されるのは本当にもったいない。
実際に漁獲されてもほとんど利用されない、投棄される魚を減らすために、静岡県沼津市戸田の「深海魚直送便」や「ヘンテコ深海魚便」といった、深海魚を販売する取り組みがよく知られていますが、それでも消費者は深海魚をどのように食べていいかわからないというケースもありそうです。
実際にさまざまな深海魚を食している「伝え手」が漁業者・販売者と消費者の間に立ち、連携していくことも重要なのではないかとも考えています。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献
中坊徹次(2013)、日本産魚類検索 全種の同定 第三版、東海大学出版会
山田梅芳・時村宗春・堀川博史・中坊徹次(2007)、東シナ海・黄海の魚類誌.東海大学出版会
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