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学生時代の経験と今

━━━みずほさんのこれまでの経歴を教えてください。

東京海洋大学を卒業した後、大学院に2年間いきました。その後3年間は、家の漁業・養殖と、魚を獲る漁師をやって。その後1年間デザインの専門学校に通って卒業して、今って感じです。

今は、ヨットハウスにいってお客さんと話したり事務系の仕事をしたり、あと漁師も手伝いつつ、自分の制作もしたりと、色々とやっています。

━━━大学では漁師になることを見越して勉強をされていたのですか?

そんなこともなくて、海洋大にいきたかったのは魚が好きだったのもありますが、どちらかというとさかなクンに憧れを抱いていて。魚の研究をしたいと思っていったのですけれど、学んでいるうちに、漁業っていう魚を獲る方法に興味をもって。その授業がおもしろくて、そちらの方向にそれていった感じです。

あとは就活をしたくなかったんですよ(笑)

スーツを着てパンプスを履くのが嫌で、「家で働けばいいか」って。そんな感じです。

ご自身の写真(提供:漁師みずほ)

━━━大学や大学院での勉強も今のお仕事に活かされているのですね。

うーん、でも実際に海で仕事をしてみたら、学んだ知識ってそんなに活かせなくて。やっぱり勉強と、海に出てやる仕事は違うんだなと。

でも当時入っていた研究室が現場に行かせてもらえるところだったので、いろんな漁船に乗らせてもらって、そこで見たものとか経験したものは大きいなと思います。いろんな漁師さんと知り合えたので、それも良かったです。

━━━今年の春にホタルイカ漁をされている様子をInstagramに投稿していますが、これも大学時代のつながりなのでしょうか。

大学の時に私の先輩がホタルイカ定置網漁の研究をしていて、私はその付き添いで行っていたんです。

ホタルイカの時期は忙しく船で人手がいるということで、先輩は研究をしているけれど、私は助っ人というか、乗組員さんに混じって網をひくのを手伝う感じでやっていました。そのつながりで、忙しいホタルイカの時期だけバイトしてくれるひとがいたらなあと親方が仰っていたのをきいて、「私行きたいです!」って手を上げました。

ホタルイカ好きなんですよ。綺麗で、儚いのだけれど、青い光が美しくて。

茹であがったときの姿と生きている時の姿は全然違います。

幼少期から身近だった海の生き物たち

━━━水生生物を好きになったきっかけはありますか?

家が海の近く、というか隣が海なんです。海が庭みたいな感じで、海の生き物たちが自分にとって身近な存在でした。

家の前の海を覗くとソラスズメダイがいて癒されたりとか、小学生のときとかは、学校から帰ってきて近くの船揚げ場で石をひっくり返すとカニがいるから、それをつかまえたりとか。あとは潮だまりにいるエビを捕まえて家に持って帰って食べたりとか。

ソラスズメダイ(提供:漁師みずほ)

普通、家でプールをするってなると、ビニールプールに空気をいれて水をためてってなると思うんですけれど、家に1トンくらいの水槽があって。そこに海水を入れて、観賞用の魚も入れて、一緒に泳ぐというのが我が家のプールでした(笑)

ほんとに、小学校のころからずっと遊んでもらっている友達みたいな感じです。

この間も親戚が集まるバーベキューの時、魚を生かすアクリル水槽を父が用意してお魚を入れて、プチ水族館みたいになっていたんですけれど。暑いから子どもたちは水に入りたいといって、1トン水槽に海水をためて、魚も入れて一緒に泳いでいました。

幸せ、尊敬!好きな生き物とのエピソード

━━━一番好きな水生生物はいますか?

一番って言われると結構難しいですけれど、魚だとやっぱソラスズメダイかな。

一度ソラスズメダイを飼おうとしたことがあって、自然下にいるときは青色ですごく綺麗ですけれど、捕まえると黒っぽくなっちゃって。小さい頃はそれがショックで、もう捕まえるのはやめようって決めたんです。捕まえなくても、家の前にずっといるから。

胴長(胸当て・ズボン・長靴がひと続きになったゴム製の衣服)を漁師仕事でつかうから持っていて。たまに潮が引いているときとか、それで海に入って人間の気配を消すと自分の周りに寄ってきてくれるんですよ、ソラスズメダイたちが。それがすごく可愛いから幸せで。

タコとソラスズメダイのポストカード(提供:漁師みずほ)

魚以外だと、タコが好きで。賢いじゃないですか。好きというか、すごいなと尊敬している感じです。あと、眼がかわいいなと思います。

それとタコは美味しいから、食べるのも好きです(笑) マヨネーズと七味に少し醤油をたらして混ぜた、七味マヨでお刺身をたべると美味しいんです。

一回自分でカゴを仕掛けて、そしたらタコが獲れた時があって。それがすごく嬉しくて。タコってバケツに入れて、網とかで蓋をしてもすぐに逃げるんですよ。タコを捕獲して、船にあげたけれど家に帰るまでに逃げようとしちゃって、結構大変でした。戻してもまた逃げようとするから一旦止まって戻してっていう感じで。

漁獲したタコ(提供:漁師みずほ)

━━━狙ってタコを獲ったのですか?

いや、違うんですよ。普通に魚が入ったらいいなと思って仕掛けていたら、タコが入って。獲れると思っていないから、タコを入れる用の袋とかを準備していなくて。びっくりしました。

漁獲したタコが逃げるのを戻そうとしているところ(提供:漁師みずほ)

━━━タコをモチーフにした作品もつくっていますね。

SAKANA BOOKSさんで去年、池田譲さんの『タコは海のスーパーインテリジェンス』(※3)っていう本を買って。去年デザイン学校の課題で本の装丁をつくるという課題があったから、せっかくなら海の生き物の本でやりたいなと思ったんです。タコはすごく面白そうだなと思って。

その本のなかに、「イカとタコは貝のような守りの生き方に満足しないで、殻を捨てて自由を求めて大海に飛び出した異端児」っていうような意味のことが書いてあって。イカとタコの生き方すごいなと、尊敬です。その本を読んでタコのことをもっと好きになりました。

※3:池田譲『タコは海のスーパーインテリジェンス 海底の賢者が見せる驚異の知性 DOJIN選書88』(化学同人)

デザインの専門学校の課題で制作した作品(提供:漁師みずほ)

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サカナト編集部

サカナト編集部

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サカナに特化したメディア『サカナト』。本とWebで同時創刊。魚をはじめとした水生生物の多様な魅力を発信していきます。

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