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水槽でも再現する違う種同士の不思議な<共生関係> まさに持ちつ持たれつ?

熱帯魚の魅力は、その美しい見た目だけではありません。水槽の中で繰り広げられる小さな世界には、自然界の不思議な生態や関係性が詰まっています。

なかでも、「共生関係」と呼ばれる不思議な関係性を持つサカナたちは、眺めているだけで心が和む一面があるのです。

守り守られる者たち「カクレクマノミとイソギンチャク」

映画の影響で一躍有名になったクマノミ類は、イソギンチャクと深い共生関係を築いていることで知られています。

通常の魚はイソギンチャクの刺胞に刺されてしまうと、とても危険です。しかし、クマノミ類の体表はイソギンチャクの刺胞の発射を刺激するシアル酸が、他のスズメダイ科と比較して少ないことが分かっています。

カクレクマノミ(提供:PhotoAC)

これによりクマノミ類はイソギンチャクの刺胞を回避。クマノミ類にとってイソギンチャクは外敵から身を守るための隠れ家として機能しているのです。

一方、近年の研究では、クマノミ類のフンがイソギンチャクとイソギンチャクに共生している褐虫藻の餌になっていることが判明しています。

また、クマノミ類が行う「餌やり行動」も知られており、まさに「持ちつ持たれつ」の関係と言えるでしょう。

協同作業をするものたち「ハゼとエビ」

カクレクマノミとイソギンチャクの共生関係はとても有名ですが、このペア以外にも共生関係を築いている生物たちがいます。

それが、共生ハゼとテッポウエビ類のコンビです。海底に穴を掘って生活するエビは、掘削能力に長けているものの、視力が非常に弱いため、外敵が近づいても気付きにくいという弱点を抱えています。

テッポウエビ類と共生ハゼ(提供:PhotoAC)

そこで登場するのが共生ハゼです。共生ハゼは視力が優れており、巣穴の入り口で見張り役を果たします。

テッポウエビは共生ハゼの尾びれに触角で触れることにより動きを感じ取り、危険を察知するとすばやく穴の中に引き返します。この絶妙な役割分担によって、両者は安全で快適な生活を維持しているのです。

筆者の実家でもこのペアで飼っていた時期がありましたが、一生懸命巣穴作りに励むテッポウエビと見張り役の共生ハゼのふたりは、お互いを信頼し合ってそれぞれの作業に勤しんでいる様子にほっこりしました。

種を超えて支え合う生きものたち

熱帯魚の世界には、ただ美しさを楽しむだけではない、奥深い関係性や生態の魅力が隠されています。カクレクマノミとイソギンチャク、ハゼとエビといった共生関係は、まさに自然界が生み出した協力のかたちです。種を超えて支え合う姿は、見ている私たちにもやさしさや温もりを感じさせてくれます。

こうした魚たちの姿からは、生きるための知恵や、信頼によって築かれる関係性の大切さを学べるかもしれません。自然界での“共生”という小さなドラマに、今日も目を奪われてしまいそうです。

(サカナトライター:せんば千波)

参考文献

沖縄科学技術大学院大学-クマノミは人間よりも優れた分類学者である

サイエンティフィック・レポート 15 論文番号4115 小林裕也 近藤有紀 甲田正典&粟田智-クマノミによる宿主イソギンチャクへの積極的な餌供給

大阪公立大学-クマノミが選んだエサの積極的な給餌は、イソギンチャクの成長を支える

クマノミとサンゴイソギンチャクの共生の観察(その1)-日本動物園水族館協会

大阪市立大学大学院理学研究科 山田 泰智(Yamada, Taichi) 安房田 智司(Awata, Satoshi)-新発見!餌でつながるハゼとテッポウエビの共生関係はワンパターンではなかった

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せんば千波

せんば千波

見るのも食べるのも魚好き。リアルもゲームも釣りが好き。

ゲームの中でも現実でも釣りが好き。幼少期から熱帯魚や古代魚と暮らしてきました。管理栄養士目線で魚の魅力を発信していきます。熱帯魚ハコフグ推し。

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