水産大国の日本では、各地で多種多様な魚介類が養殖されています。養殖業の課題は様々であり、魚の病気「魚病」もその1つです。
トラフグの口白症状は40年以上も前に報告された魚病で、致死率の高いことが知られています。しかし、口白症の原因ウイルスについては長年謎に包まれていました。
そうした中で、岡山理科大学、福井県立大学、愛媛大学、三重大学の研究グループは、口白症の原因となるウイルスの全ゲノム配列を解明し、原因ウイルスが新属・新種であることを明らかにしました。
この研究成果は「Archives of Virology」に掲載されています(論文タイトル:Genome sequencing and analysis of kuchijirosho virus identify it as a novel member of the family Amnoonviridae within the order Articulavirales)。
養殖もされる高級魚「トラフグ」
トラフグ Takifugu rubripes はフグ科トラフグ属に分含まれる海水魚です。
本種はトラフグ属の中でも大きくなる種で、全長70センチにもなります。食用として重宝されており、現在は西日本をはじめ日本各地で高級魚として扱われる魚です。
トラフグ(PhotoAC)トラフグは高級であるが故に、漁業や遊漁だけでなく養殖の対象にもなり、特に長崎県などで盛んに行われています。
致死率の高い口白症
魚の養殖で無視できないのが魚病です。魚病はウイルス、細菌、寄生虫によって発症し、養殖業に甚大な被害を与えます。
トラフグ養殖においては、「口白症」が致死率の高い魚病として知られてきました。この病気は九州の養殖場で発生し、1982年に新規の病気であることが報告されています。
噛み合いによって個体から個体へと感染させることから、一度発生すると生簀のトラフグを全滅させてしますそうです。そのため、この口白症はトラフグ養殖における大きな課題となっています。
ゲノム解析で白口症の原因ウイルスを特定
口白症に関しては長らく謎が多く、最近まで口白症ウイルスゲノムは特定されていませんでした。
2021年、福井県立大学と三重大学の研究グループは口白症のゲノムを一部発見。このゲノムを検出し、口白症の確定診断をすることに成功したものの、全ゲノム解析が課題となっていたのです。
今回、岡山理科大学、福井県立大学、愛媛大学、三重大学の研究グループが行った研究では、口白症の原因となるウイルスの全ゲノム配列を解明。解析結果では、白口症の原因ウイルスはアムヌーンウイルス科(Amnoonviridae)に含まれるものの、既知のウイルスとは異なることを明らかにしました。
そこで、研究グループは本ウイルスを新属・新種とし、クチジロウイルス・フギナム Kuchijirovirus fuginum を提案しています。また、本ウイルスはアムヌーンウイルス科の中でも、特異的な系統であることが判明したのです。
ワクチン開発にも貢献
今回の研究によりトラフグの口白症をもたらすウイルスの全ゲノムが解析され、クチジロウイルス・フギナム Kuchijirovirus fuginum の名が提案されました。
今後の研究で、口白症の病態解明やワクチン開発など、研究基盤の整備が期待されています。
(サカナト編集部)