高齢化に伴い患者数が増加する「パーキンソン病」は体を動かしにくくなる疾患です。
その原因は、脳内で「ドパミン」という重要な物質をつくる神経細胞が減少することにあるといいます。このドパミンが不足すると、脳から体への指令がうまく伝わらなくなってしまうのです。
今回、岩手大学農学部生命科学科分子生命医科学コースの尾﨑拓准教授の研究チームは日本鯨類研究所との共同で、ヒゲクジラに豊富に含まれる成分「バレニン」がパーキンソン病モデルマウスにおいて、症状の進行を抑制することが判明。バレニンによって、ドパミンを産生する神経細胞が保護されていることが明らかになりました。
この研究の成果は「Biochimica et Biophysica Acta – General Subjects」に掲載されています(論文タイトル:Balenine alleviates neurodegeneration and inflammation in a mouse model of Parkinson’s disease)。
食肉中の機能性成分<バレニン>
バレニンは「イミダゾールペプチド」と呼ばれる、食肉中の機能性成分の1つです。
この成分はクジラ肉に多く含まれていることが知られており、イミダルゾールペプチドは機能性表示食品の成分として疲労感の軽減効果などが認められています。
クジラ肉(提供:PhotoAC)さらに、経緯度認知機能障害における改善効果の報告があり、アンチエイジング効果にも注目されているようです。
最近の研究では、クジラ肉以外に含まれている他のイミダゾールペプチドよりも人の体内で分解されにくいことも明らかになっています。このことから、人の体内ではバレニンが高い効果を示すことが期待されているのです。
パーキンソン病へのバレニンの効果
今回の研究は、バレニンが高齢に伴う病気にも有効かどうかを確かめるべく、パーキンソン病に着目しています。
パーキンソン病とは高齢化に伴い増加する疾患で、脳内でドパミンという物資を生産する神経細胞の減少が原因です。ドパミンが不足することにより、脳から体へ命令が伝わりづらくなってしまいます。
神経細胞を保護することが判明
パーキンソン病に類似した症状を持つマウスを対象に実験を行った結果、バレニンを投与したマウスでは異常行動が減少することが明らかになりました。
さらに、脳を解析したところ、バレニンが神経細胞を保護していたことも判明。このメカニズムについても詳しく調べられており、バレニンが機能が低下したミトコンドリアを破壊し、作り直す仕組みを活性化していることがわかっています。
この働きにより細胞はエネルギー生産能を維持し、結果としてパーキンソン病の症状が抑制されたと考えられています。
他の神経変性疾患への応用も期待
今回の研究によって、クジラ肉に豊富に含まれているバレニンが、マウスにおいて、神経細胞を保護していることが明らかになりました。
今後は、人への有効性の検証や、投与方法の最適化、他の神経変性疾患への応用が期待されています。
(サカナト編集部)