北里大学海洋生命科学部の中澤勇人大学院生と高田健太郎教授、法政大学国際文化学部の島野智之教授らの研究グループは、アカハライモリの毒がササラダニ類に由来していることを明らかにしました。
この研究の成果は「Journal of Natural Products」に掲載されています(論文タイトル:Oribatid Mites Supply Tetrodotoxin to Poisonous Newts )。
フグ毒を持つアカハライモリ
自然界には様々な毒がありますが、中でもテトロドトキシン(TTX)は強力な神経毒として知られています。
ヒガンフグ(提供:PhotoAC)TTXは別名「フグ毒」と呼ばれることからも分かるように、フグ類が持つ毒として有名です。しかし、TTXを持つ脊椎動物はフグ類だけでなく、カエルやアカハライモリなど一部の陸上脊椎動物からも見つかっています。
一方、陸上脊椎動物たちがどのようにしてTTXを獲得しているのかは、謎に包まれていたのです。そうした中で、研究グループは、アカハライモリ Cynops prorogated が持つTTXについて調査を行いました。
陸上生活初期に毒で身を守る?
日本産アカハライモリは、孵化した幼生が変態後に陸へ上がり、成体になると再び水中生活に戻るといった生活史を持ちます。
アカハライモリ(提供:PhotoAC)研究では、まずそれぞれのステージにおけるTTXとTTXの推定生合成中間体であるCep-210の存在量が調査されました。
その結果、卵や幼生ではTTXがほとんど検出されなかった一方、陸上生活初期に入った後、TTXおよびCep-210の存在量が大きく増加することが明らかに。これはアカハライモリが陸上生活初期に毒で身を守っていることを示しているといいます。
胃内容物から食性を明らかに
次に研究グループは、陸上生活初期におけるアカハライモリの食性を明らかにすべく、胃内容物を調べました。
その結果、胃内容物からワラジムシ類、線虫類、多足類、昆虫類、ダニ類が見つかっています。特にササラダニ類は主要な餌の1つで、アカハライモリが土壌中の節足動物を積極的に利用していることが判明しました。
毒はササラダニ類に由来
アカハライモリの生息地の土壌から採集されたササラダニ類を分析した結果では、Scheloribates processus と Galumna sp. KM1 の2種類から関連化合物が発見されています。
これらの関連化合物はアカハライモリに見られる組成とよく似ていることから、アカハライモリはササラダニ類からTTXを獲得している可能性が強く示唆されたのです。
飼育下での実験でも実証
飼育下での実験では、陸上生活初期の幼若アカハライモリにTTXを含むササラダニ類が与えられました。
アカハライモリ(提供:PhotoAC)その結果、幼若個体はササラダニ類を捕食し、33日間の摂餌後に尾部に含まれるTTXの量が増加しています。このことから、アカハライモリはササラダニ類を捕食しTTXを蓄積することが示されました。
なお、TTXを含むササラダニ類 Scheloribates processus からはヤドクガエル類で知られる毒も検出されたようです。
“陸上毒の供給網”という考え方
今回の研究によって、アカハライモリが持つTTXが、2種のササラダニ類であることが明らかになりました。また、この毒は陸上生活初期に身を守るために獲得していることもわかっています。
この成果は「陸上毒の供給網」という新しい考え方を提案するものとなりました。一方、ササラダニ類がどのようにTTXを獲得しているのかは、特定されておらず、今後の課題とされています。
(サカナト編集部)