ノーザンパイク(Esox lucius)は、釣り好きにはおなじみの大型淡水魚かもしれません。ヨーロッパでは、スポーツフィッシングの人気ターゲットとして、よく知られています。
筆者がラトビアで湖沼生態系の研究をしていたころ、フィールドで出会う美しいノーザンパイクには、毎回テンションが上がったものです。
とても大きく、ユニークな見た目をしているノーザンパイクですが、一体どのような魚なのでしょうか。
「カワカマス」とも呼ばれる大きな魚
姿かたちが海水魚のカマス科の魚と似ていることから、「カワカマス」とも呼ばれます。緑~茶褐色の体に白い斑点模様があり、最大で1.5mにもなる大型魚です。
尖った長い口に鋭い歯、大きな目など、まさに“待ち伏せ型捕食者”に特化した形態を持っています。
約110センチ、12キログラムの大型個体 (提供:Polo the Rat)北米からロシア、ヨーロッパにかけての寒冷地域に広く分布し、湖沼・河川・汽水域の流れのゆるやかな場所を好みます。
胃の内容物が語る、なんでも食べる捕食者
水生植物や倒木、水中の岩陰などにじっと潜み、通りかかる獲物を瞬間的なダッシュで急襲します。肉食性で、魚類だけでなく、昆虫、ネズミ、時には水鳥まで捕食することがあり、動くものは何でも襲うといわれるほど貪欲です。
筆者が研究所で行っていた胃内容物分析では、ローチ、ラッド、ブリーム、ヨーロピアンパーチ、パイクパーチ、ザリガニなど、さまざまな獲物を確認しました。
大型個体の胃から小型のノーザンパイクが出てくることもあり、共食いの傾向もみられます。
釣り好きの友人に見せてもらったビデオでは、胃の中からカモのヒナが出てきたこともありました。水中に棲む魚が鳥を食べるというのは、普通に考えて驚きですよね。
胃の中から出てきたカモのヒナ (提供:Polo the Rat)食物連鎖の頂点としての役割
ノーザンパイクは湖沼生態系の頂点に立つ捕食者で、小魚の個体数調整や弱った個体の除去に貢献しています。ノーザンパイクが減ると小魚が増えすぎ、プランクトン量や水質に影響が出ることもあります。
生態系の健全性を保つうえで、重要な役割を果たしているというわけです。
理論上は最大のエネルギーを得られるサイズを選ぶはずですが、実際には“小さめの獲物”を好む傾向があります(Skov,C. and Nilsson,P. A (2018))。
その理由は、大きすぎる獲物は、ハンドリング(捕食者が獲物を捕らえてから飲み込むまでの行動)に時間がかかり効率が落ちること、そしてハンドリング時間が長引くと他のパイクに横取りされたり自分が共食いの標的になったりするリスクが高まるためです。
ノーザンパイクは、「効率と安全性のバランス」を取った捕食行動をしているのですね。
ヨーロッパに行く機会があれば観察してみよう
ノーザンパイクは、日本には生息しておらず、かつて観賞魚として流通していました。しかし2006年に特定外来生物に指定され、現在は飼育が禁止されています。
姿だけでなく、生態も独特な魅力を持つノーザンパイク。
もし北米や北欧へ釣りに行く機会があれば、ぜひ大きなノーザンパイクを狙ってみてください。
参考文献
Biology and Ecology of Pike (2018) Skov, Christian and Nilsson, P. Anders, CRC Press