ユムシは干潟や転石帯に巣穴を掘って暮らす環形動物。宿主虫としても知られており、体表面や巣穴には甲殻類や二枚貝などが共生しています。
現在、ユムシの個体数が減少しており、絶滅危惧種に指定されている種も少なくありません。そのため、こうした共生生物たちの減少も危惧されています。
ムラサキエビモドキもユムシと共生する生物の1つですが、本種は新種記載されて以降、再発見の報告がない“幻のエビ”でした。そのため、どのユムシに共生するのかなど、生態は謎に包まれていたのです。
そうした中で、京都大学の花岡朋哉氏らの研究グループは、ムラサキエビモドキを再発見し、その生態を明らかにしました。
この研究成果は『Zoological Science』に掲載されています(論文タイトル:Rediscovery of the Red-and-White Commensal Shrimp Athanopsis dentipes (Alpheidae),Revealing an Expanded Host Range Among Spoon Worms (Annelida: Thalassematidae))。
ユムシと共生する生物たち
ユムシは干潟や転石帯に巣穴を掘り生活する環形動物の1グループです。
宿主虫でもあり、ユムシの体表やユムシの作る巣穴は甲殻類や二枚貝類の棲家となっています。
ユムシ類(提供:PhotoAC)そんなユムシですが、現在は数を減らしており、絶滅危惧種に指定されている種も少なくありません。それに伴い、ユムシと共生する生物の絶滅も危惧されています。
ユムシに共生する1種<ムラサキエビモドキ>
長崎県や熊本県の沿岸に生息するムラサキエビモドキ属のムラサキエビモドキ Athanopsis dentipes もユムシに共生する生物の1つです。
しかし、本種は潮間帯という比較的観察が容易な環境に暮らす一方、1980年に新種記載されて以来、再発見の報告がありませんでした。
原記載論文ではサビネミドリユムシを利用していることが示唆されていたものの、その詳細は不明瞭であり、本種が実際どのユムシと共生しどのような生態を持つのかは、謎に包まれていました。
約45年ぶりの再発見!
2021~2025年にかけて行われた調査では、和歌山県の潮間帯に生息するユムシから、白色透明で赤い斑紋を持つエビが7個体得られています。
研究グループは、これらの標本を形態的・遺伝的な特徴を精査し、これがムラサキエビモドキであることを明らかにしました。
本種の発見は新種記載以来の実に約45年ぶりとなったのです。
また、これまで知られていなかったオスの形態を判明し、はさみの形態に雌雄差があることがわかっています。
どのユムシと共生する?
ムラサキエビモドキ属のテッポウエビは、9種中8種でユムシと共生することが知られています。
こうしたことから、本属のテッポウエビはユムシとの共生に進化した特異的な分類群とされています。
しかし、ムラサキエビモドキに関しては共生しているユムシの種類もわかっていなかったのです。
4種との共生が示される
そこで、研究グループは形態的・遺伝的な手法により、ムラサキエビモドキが共生するユムシの特定を試みました。
その結果、ムラサキエビモドキの宿主はサビネミドリユムシ属の3種、タテジマユムシ近似種の2属4種であることが明らかになっています。これにより、原記載論文で示唆された本種によるサビネミドリユムシ属の利用が確実に裏付けられたことに加え、タテジマツムシ属の利用も明らかにしたのです。
この結果は、ムラサキエビモドキの基礎的な生態を明らかにした重要なものとなりました。
有効な保全策の検討に貢献
今回の研究によって、新種記載以来、再発見の報告がなかったムラサキエビモドキが約45年ぶりに発見されました。また、不明だったオスの形態や利用しているユムシの種類も明らかになっています。
この成果はムラサキエビモドキの基礎的な生態を明らかにするとともに、本種の有効な保全策の検討が進むことも期待されています。
研究グループは、今後もユムシ共生系の実態を基礎研究と保全の両面から解明していく予定としています。
(サカナト編集部)