知床半島の南東側に位置する羅臼町。
ここでは漁業が盛んに行われており、ホッケやキンキ、幻のエビとも呼ばれるブドウエビなどが漁獲対象となっています。
また、羅臼沖は学術的にも注目の海域で、これまでに多くの新種が発見されており、キンキ刺網で混獲されていたダイオウキジンエビはその一例です。
そうした中で、千葉県立中央博物館の駒井智幸研究課長はアクアマリンふくしまとの共同研究で、羅臼沖から得られたイビラモエビ属のエビを新種記載しました。
この研究成果は『Crustaceana』に掲載されています(論文タイトル:A new species of the thorid genus Lebbeus White, 1846 (Decapoda: Caridea) from deep-sea of Nemuro Strait, Hokkaido, Japan)。
新種が相次いで見つかる羅臼の深海
知床半島の南東部に位置する羅臼町の沖合では、刺し網やエビ籠など漁業が盛んに行われてきました。
羅臼町では、主な漁獲物としてキンキ、タラ類、ボタンエビが知られるほか、幻のエビとも呼ばれるブドウエビも水揚げされています。
羅臼町と海(提供:PhotoAC)また、羅臼沖の深海は学術的にも注目の海域であり、近年、新種の生物が相次いで発見されています。
多数のエビ類が新種記載
これまで、千葉県立中央博物館の駒井智幸研究課長とアクアマリンふくしまは、商業漁業のエビ籠や刺網で漁獲される生物の調査を行ってきました。また、アクアマリンふくしまは漁業者の協力を得て、20年にもわたり知床半島羅臼沖の深海採集調査を実施しています。
これにより羅臼沖からダイオウキジンエビ、ラウスブドウエビ、ラウスツノナガモエビ、シラユキモロトゲエビ、シレトコモロトゲエビ、クレナイモロトゲエビなどが発見され新種記載されました。
中でもダイオウキジンエビはキンキ刺し網の混獲物であり、羅臼町では食用にもなっていたといいます。ダイオウキジンエビは、地元で食べられていたエビが新種ということで大きな話題となりました。
こうしたエビ類の報告がまだ記憶に新しい中、駒井氏はアクアマリンふくしまとの共同研究で、羅臼沖から得られたイバラモエビ属のエビを新種記載しました。
燃えるような赤色に因み命名
今回、新種記載されたイバラモエビ属は、アクアマリンふくしまが20年間にわたり実施している深海生物調査の中で採集されたものです。標本は2019年と2022年にエビ籠漁により、水深525~825メートルから2個体得られたといいます。
研究グループは、これらについて形態学的・遺伝学的解析を実施し、既知の種のいずれとも一致しないことを明らかに。本種は Lebbeus flammeus と命名され、和名は燃えるような赤い体色に因みホムライバラモエビと名付けられました。
なお、近縁種であるアシナガイバラモエビとは、尾節のトゲが多いこと、体色が全体的に濃いこと、歩脚に白い縦線が入ることなどから区別できるとされています。
東アジアのイバラモエビ属は41種に
今回の研究によって、羅臼沖の深海からエビ籠漁によって得られたイバラモエビ属のエビが新種として記載され、ホムライバラモエビと命名されました。これにより、東アジア海域のイバラモエビ属は41種になったとのことです。
羅臼沖では、これまでも様々な新種が発見されており、学術的にも注目の海域です。今後も羅臼沖から新種の生物が発見されるかもしれませんね。
(サカナト編集部)