魚卵は「プリン体が多い」と思っている人は少なくないでしょう。
ところが、食品中のプリン体を測定した研究を見ると、魚卵の数値にはかなりの差があります。
なかでもイクラは、100グラムあたり3.7ミリグラムと非常に少ない値でした。
一方、たらこは120.7ミリグラム、明太子は159.3ミリグラムです(金子希代子ほか「食品中プリン体含量および塩基別含有率の比較」2015、J-STAGE)。
同じ魚卵なのに、なぜこれほど違うのでしょうか。鍵になるのが、プリン体の由来と魚卵の粒の大きさです。
イクラのプリン体は魚卵の中でも少ない
イクラの総プリン体量は、魚卵の中でも少ない測定値が報告されています。
帝京大学の研究グループが食品292品目のプリン体含量を調べた研究では、イクラは100グラムあたり3.7ミリグラムでした(金子希代子ほか「食品中プリン体含量および塩基別含有率の比較」2015、J-STAGE)。
カズノコは21.9ミリグラム、スジコは15.7ミリグラムで、いずれも同研究の分類では「非常に少ない」に当たります。
その一方、たらこは120.7ミリグラム、明太子は159.3ミリグラムでした。こちらは「中程度」に分類されています。
たらこ(提供:PhotoAC)「魚卵」とひとまとめにしても、プリン体量が同じとは限りません。イクラと明太子では、同研究の測定値に約43倍もの差があります。
プリン体の多くは細胞に含まれる核酸に由来する
魚卵によって差が生まれる理由を考えるうえで重要なのが、プリン体と細胞の関係です。
プリン体は、DNAやRNAなどの核酸を構成する成分にも含まれています。
2025年に発表されたプリン代謝に関する総説では、食品中のプリン体の多くは細胞内の核酸に由来し、100グラムあたりの細胞数が多いほどプリン体も多くなると説明されています(金子希代子「プリン代謝を巡る基礎研究とその臨床への活用」2025、J-STAGE)。
ここが少し意外なところです。
魚卵の場合、粒が大きいほど、同じ100グラムの中に含まれる粒の数は少なくなります。
同総説ではこの点から、粒の大きな魚卵ほど100グラムあたりの細胞数が少なくなり、プリン体も少なくなると説明しています。
大粒のイクラと小粒の魚卵で差がみられる
実際の測定値を並べてみると、魚卵による違いがよく分かります。
イクラは3.7ミリグラム、スジコは15.7ミリグラム、カズノコは21.9ミリグラムでした。
一方、とびこは67.8ミリグラム、キャビアは94.7ミリグラム、たらこは120.7ミリグラム、明太子は159.3ミリグラムです。いずれも100グラムあたりの総プリン体量です。
とくに大粒のイクラが低く、小さな卵が集まるたらこや明太子では高い値が示されています。
イクラ(提供:PhotoAC)とはいえ、「粒が小さければ必ずプリン体が多い」とまでは言えません。
研究で示されている数値は、それぞれ測定した食品試料についての結果です。粒の大きさは、魚卵ごとの差を読み解く一つの手掛かりとして捉えるのがよいでしょう。
魚卵を一括りにすると見えない違い
魚卵は見た目も味もさまざまですが、プリン体量にも大きな違いがあります。
「魚卵だからプリン体が多い」と考えると、イクラやカズノコのような例を見落としてしまいます。
反対に、すべての魚卵が少ないとも限りません。
イクラのプリン体が少ない背景には、100グラムあたりに含まれる細胞数と、粒の大きさが関係していると考えられています。
身近な魚卵を成分から比べてみると、同じ「卵」という呼び名の中にも、生き物ごとの違いが見えてくるのではないでしょうか。
(サカナトライター:原田大樹)
参考文献
金子希代子・福内友子・稲沢克紀・山岡法子・藤森新(2015)「食品中プリン体含量および塩基別含有率の比較」『痛風と核酸代謝』39巻1号、7–21頁