ウミグモは世界から約1,200種、日本からは約170種が知られているクモのような姿をした節足動物です。
独特の姿が注目されがちなウミグモですが、体表に様々な生物が付着するといった特徴も持ちます。これまで、ヒルの仲間や巻貝の仲間がウミグモの体表を産卵場所として利用することが知られてきました。
こうした中で、北海道大学大学院理学院博士後期課程の関口翔悟氏と同大学大学院理学研究院の角井敬知講師の研究グループは、日本海溝の深海域から日本初記録のウミグモの一種と、その体表から未知のタマゴを発見しました。
この研究は『SPIXIANA』に掲載されています(論文タイトル:Abyssal cradle: flatworm egg capsules on a deep-sea sea spider, with an integrative redescription of Ascorhynchus mariae Turpaeva, 1971)
海底に暮らすクモ「ウミグモ」
ウミグモはクモのような見た目をした、節足動物の一群です。沿岸~深海の海底に暮らしています。
このグループは世界で約1,200種が知られており、日本からも約170種が報告されています。ウミグモはその独特な姿が注目されがちですが、他にも面白い特徴をもつ生物です。
実はウミグモの体表には、様々な生物がくっつくことが分かっています。これまで浅海に棲むヒルの仲間や南極の巻貝の仲間が、ウミグモの体表を産卵場として利用することが知られているのです。
また、ウミグモの体表をどのような動物が利用しているのかを明らかにすることは、深海における生態系や生物多様性の理解に貢献すると考えられています。
深海ウミグモと付着していた卵嚢を同定
論文の筆頭著者である関口氏は、これまで日本のウミグモの多様性と、他の生物の生息場・産卵場としてのウミグモの役割について研究してきた人物です。
今回の研究では、2023年9月27日に白鳳丸によって北西太平洋(日本海溝)の水深3,685~3,693メートルから採集されたメス1個体、同日水深3,890~3,893メートルから採集されたメス1個体が対象となっています。
太平洋のイメージ(提供:PhotoAC)また、ウミグモの体表から発見された卵嚢および卵嚢の殻と思われる構造についても、形態的・遺伝的な手法により同定が行われました。
ヘビの舌に見立て和名を提唱
ウミグモの形態を観察した結果では、2標本とも今まで日本から報告されていなかった、 Ascorhynchus mariae であることが明らかになりました。
また、過去に報告されたAscorhynchus mariae は、今回の2標本のいずれよりも浅い場所から採集されており、この記録は日本初記録だけでなく、最深記録となったのです。
これまで、本種の形態情報がオスのみであったことから、研究グループはメスの形態情報も詳細に記載。さらに、本種にはまだ和名が付けられていないことから、頭部にある突起の先端が2つに分かれている形質をヘビの舌に見立て、ヘビジタトックリウミグモを提唱しました。
ナゾの卵嚢は扁形動物のもの
ヘビジタトックリウミグモの体表に付いていた“謎の卵嚢”については、分子系統学的解析によってTrigonostomidae科に属する扁形動物の卵嚢であることが判明。さらに解析を行った結果、Ptychopera属という浅海性のグループに近縁であることも明らかになっています。
一方、Ptychopera属の種間には大きな遺伝的距離が確認されたこと、Trigonostomidae科の既知種はいずれも浅海性であることから、今回、発見された卵嚢は本科に属する未知の種であることが示唆されています。
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