サンゴは植物ではなく、刺胞動物と呼ばれる動物の一種です。サンゴはサンゴ礁をつくり、その地域に生きるヒトを含むすべての生物の生きる基盤を生み出すほか、近年はこのサンゴそのものを水槽で飼育するアクアリストも増えてきました。
そんなサンゴは学術的にもよく使用されるリンネ式ルールのほか、アクアリストによって独特な分類もなされてきました。今回はアクアリストによるサンゴの分類と、リンネ式分類の違いについて解説します。
なお、ここではサンゴの飼育についても触れています。しかしながら、サンゴはいかなる種も真水(淡水)で飼育することはできません。またサンゴ飼育には、淡水魚や海水魚飼育とは異なるものが必要になります。詳しくは専門誌などをご参照ください。
そもそも、サンゴとは何?
サンゴは刺胞動物門の動物です。サンゴは他の海洋生物とは異なり動くことができず、多くの種が光合成をすることから植物と考えられがちですが、刺胞動物門に含まれるれっきとした動物なのです。光合成はおこないますが、これは褐虫藻という藻類を寄生させて、光合成を行いエネルギーを得ているのです。
サンゴをよく見るとひとつひとつ、小さなポリプがあり、ミドリイシやキクメイシなどのサンゴはこれらのポリプの集合体となります。サンゴの表面をよくみると、表面にたくさんのポリプを見ることができ、ポリプから小さな触手をだして餌をとったりしています。
一方ハナガタサンゴやクサビライシなどのように巨大なひとつのポリプからなるサンゴもいます。ポリプには小さな触手があり、それを使って餌をとります。
サンゴが集まってできた地形を「サンゴ礁」といいます。サンゴ礁は普通熱帯・亜熱帯海域に発達し、魚をはじめ甲殻類、軟体動物、棘皮動物から大型のウミガメ、最終的にはヒトにいたるまで多くの生物の生息の基盤を作りますが、そのサンゴ礁域の多くは海水温の上昇や、大規模なダイナマイト漁法、赤土の流出などにより危機的な状況にも置かれています。
六放サンゴと八放サンゴ
今日の分類体系において使われている「リンネ式分類」は、生物を上位分類群から順に「界・門・綱・目・科・属・種」にわけ、その間に「亜綱(綱と目の間)」、「亜科」「族」(科と属の間)などを設けることも多くあります。
よく知られているサンゴをこのリンネ式分類のルールにしたがって分類していくと、ウスコモンサンゴは、動物界‐刺胞動物門‐花虫綱‐六放サンゴ亜綱‐イシサンゴ目‐ミドリイシ科‐コモンサンゴ属‐ウスコモンサンゴ(種)となり、一方でオオウミキノコは動物界‐刺胞動物門‐花虫綱‐八放サンゴ亜綱‐ウミトサカ目‐ウミトサカ科‐ウミキノコ属‐オオウミキノコ(種)となり、ウスコモンサンゴとオオウミキノコは亜綱の段階で分かれていることがわかります。
なお、目よりも下の分類体系は大幅に見直しが行われており、書籍などによって科名などがかわっていることがあり、注意が必要です。
一般的にアクアリウムショップで見られるサンゴは、六放サンゴ亜綱と、八放サンゴ亜綱に分けられています。前者はポリプやその先端の触手が6対称、またはその倍数あるのに対し、後者は8対称あることが特徴です。
六放サンゴはミドリイシやキサンゴなど多くのイシサンゴのほか、イソギンチャクやハナギンチャク、マメスナギンチャクなども含みます。後者の八放三國無双にはウミキノコやトサカ類からウミエラ、ヤギなども含まれています。
ソフトコーラルとハードコーラル
硬い骨格をもっているのがハードコーラルです。一方ソフトコーラルにも微細な骨があり、体に小さな骨片を有しているほか、ヤギというサンゴは硬い芯を有しそれに共肉がつき、そこからポリプが出ているようなものもいます。
多くの場合、ハードコーラルが六放サンゴ、ソフトコーラルが八放サンゴとされ、以下に紹介するサンゴ分類法よりもリンネ式分類に近いといえます。
しかし、例えばハードコーラルに含まれるアオサンゴはハードコーラルのほぼ全てを含むイシサンゴ目の含まれる六放サンゴ亜綱ではなく、八放サンゴ亜綱に含まれ、ソフトコーラルに含まれることが多いマメスナギンチャクなどは六放サンゴ亜綱に含まれるなど、そのままこの分類を使うと混乱を招くこともあります。
飼育にあたってはハードコーラルは骨格形成のためにカルシウム、ストロンチウム、マグネシウムなどを飼育水に添加する必要があります。ソフトコーラルについてもヨウ素や微量元素などは添加してあげたいものです。