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南極の重要資源「メロ」の正体 実は日本人も南極の魚を食べている? 

極寒の世界が広がる南極の海には、日本でお目にかかれない魚たちが数多く生息しています。

通称「メロ」と呼ばれる魚は南極に生息する大型魚で、実は日本でも食べることができるのです。日本で南極の魚が食べられるなんてちょっと信じられませんね。

この記事ではメロについてご紹介します。

メロとは

メロはマジェランアイナメ Dissostichus eleginoides ライギョダマシ Dissostichus mawsoni の総称であり、チリでの呼び名「Mero」に由来します。

メロの切り身(提供:PhotoAC)

この2種はスズキ目ノトテニア科(ナンキョクカジカ科)に属する大型魚で大きさは1メートルを超えることも。どちらも南極海域及びその周辺海域の重要水産資源であり、主に底引き網、延縄、籠漁で漁獲されます。

ライギョダマシは主に南極海域の表層から2200メートルに生息する魚。本種を含むノトテニア科の魚は南極を中心に分布することが多いようです。

一方、マジェランアイナメは比較的広範囲に分布し、南極海域をはじめチリやパタゴニアの大陸棚にも生息しています。ライギョダマシ同様に表層から水深2000メートル程で記録があるようです。

いずれも浅海域から記録があるものの、主に深場から採集されます。また、この2種は地理的分布により棲み分けをしていると言われています。

氷点下で魚が凍らない理由

南極の海は極寒であり水温は氷点下に達するとこもあります。

このような環境下で魚たちが生きていける理由は体液中に「不凍糖ペプチド」を持つためであり、これにより氷点下でも凍結することなく生存が可能なのです。

南極海域に生息するライギョダマシは「不凍糖ペプチド」を有するのに対し、マジェランアイナメはこれを有しません。これにより2種は水温による棲み分け(≒地理的棲み分け)をしているのです。

銀ムツの名前が使われなくなったワケ

マジェランアイナメはかつて「銀ムツ」という名で流通していたのをご存知でしょうか?

言わずもがな本種はノトセニア科に属する為、ムツ科のムツ、ホタルジャコ科のアカムツ、ヤセムツ科のヤセムツ、いずれとも異なるグループの魚です。

おそらくマジェランアイナメやメロでは馴染みがなかったことに加え、脂の乗りがよいことからムツ(ムツの由来は脂っこいを意味するむつっこいから)の名を借りたのでしょう。また、名称がよく似た銀ダラ(ギンダラ科)とも異なるグループの魚なので注意しましょう。

見た目は全くムツに似ていませんが、流通する際には切り身になっていることがほとんどなので、銀ムツと表記されてしまえば消費者はムツの仲間と勘違いしてしまったかもしれませんね。

JAS法

そんな「銀ムツ」の名ですが、2003年にJAS法が改正され本種の表記する上で「銀ムツ」、「ムツ」という名称を使うことができなくなってしまいました。

JAS法では「その内容を表す一般的な名称」の記載が定められており、禁止事項の1つに「実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語」があります。(魚介類の名称のガイドラインについて-水産庁)。「銀ムツ」の名はこれらに抵触してしまったのかもしれません。

スーパーに並ぶ魚たち(提供:PhotoAC)

以来、銀ムツの名は使われず流通上ではメロの名で目にすることがほとんどです。マジェランアイナメの味はムツに遜色ないですし、近年では世界中で需要があることから価格が高騰しています。

また、JAS法の改正で本種の他に様々な漁獲類に対して使用しない名称が定められました。例えばアメリカナマズはかつてカワフグという名称が使われていましたが、フグと誤認させる恐れがあることからチャネルキャットフィッシュの名称が用いられるようになったのです。

このように南極で漁獲された魚が日本で食用流通しているのは意外にも知られていません。南極で獲れた魚を食べることができるのは不思議な感じがしますね。

(サカナト編集部)

参考文献

平成 30 年度国際漁業資源の現況 73 マジェランアイナメ・ライギョダマシ 南極海-水産庁 水産研究・教育機構

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サカナト編集部

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