水泡眼という金魚は、ふっくらほっぺが一度見ると忘れられない印象的なビジュアルをしています。
ペットショップでたまに姿を見かける品種ではあるものの、どちらかというと初めて見たのは「アートアクアリウム(日本古来からの金魚鑑賞文化を現代のアート空間として演出する展示。2022年からはアートアクアリウム美術館GINZAとして常設)だという方も多いかもしれません。
今回は、クセつよフォルムの金魚「水泡眼」の魅力と、育てるときの注意点をご紹介します。
まるでリス!?ぷくぷくほっぺがカワイイ水泡眼
水泡眼は元をたどると中国生まれの金魚で、日本には1950年ごろに輸入されたとされています。
目はやや上向いており、眼下に風船のような頬袋「水泡」がついているのが特徴です。
水泡の左右バランスは個体によってバラバラで、左右の風船が均等に大きいものほど価値が高いとされています。
体の色は赤のものから黒、桜色と呼ばれるものまでさまざま。大きな水泡をふるふる揺らしながら泳ぐ姿がとってもキュートな品種です。
頬の中身は実はリンパ液
アートアクアリウムに行った時、前を歩いていたカップルの男性が「この袋って中身なんだろう」と話していました。
水泡眼に興味を示すとはお目が高いなと思っていると、そばにいた女性が「エサを溜めてるんじゃない? リスみたいな」と返していて、思わずツッコミそうになりました。
愉快な想像力にほっこりしましたが、水泡眼の頬には決してエサは溜め込まれていません。この水泡は「肥大した眼球の角膜」と考えられています。
水泡の中は空洞でもなく、リンパ液が満たされています。水泡のせいで前を見るのはあまり上手ではなく、視力も良くないのですが、実際は嗅覚や側線で周囲を把握しているので問題がないようです。
水泡眼を育てるときに注意するポイント
水泡眼のチャームポイントである水泡は、人の視力が一度落ちると戻らないのと同じで、一度割れてしまうともとに戻ることのない繊細なものです。
しかしこの水泡は割れやすいため、水槽には流木や人工水草など、尖ったものや硬いものを入れないようにしましょう。
また多品種の好奇心旺盛な子が水泡をつついてしまうこともあるので、混種での飼育はオススメできません。
「水槽の水換えの時に網で掬ったら割れた」というケースもあるので、水換えの時は網の中で動かないよう優しく手を添えて移動させてあげましょう。
水泡の扱いには注意が必要ですが、水泡眼自体は丈夫で飼育しやすい品種なので、初めてペットショップで金魚を飼うという方にもオススメの品種です。
水泡の形や体色のバリエーションの多さから、同じ見た目の水泡眼には二度と出会えません。びびっと来る見た目の子がいたら、運命と思ってお迎えしてみてはいかがでしょうか。
(サカナトライター:桐田えこ)