愛媛県今治市で10月22日、地元小学生らによるキジハタの種苗放流が行われました。
愛媛県ではキジハタを古くから重宝しており、その希少性から「幻の魚」とも呼ばれています。
キジハタとは
キジハタはハタ科に属する中型の魚で、大きさは40センチ程。
本種は褐色の体にオレンジ色の斑点が無数にあることや、背びれの基底に大きな黒斑があることなどにより他のハタと区別することが可能です。
キジハタは日本各地の浅海域に生息しますが、特に日本海や瀬戸内海で多く見られ各地で食用魚になるほか釣りのターゲットにもなっています。産地ではキジハタのほかに「アコウ」とも呼ばれており、この呼び名は全国的に有名です。
また、本種は性転換する魚としても知られており、メスとして成熟した後、40センチ程でオスに性転換します。
愛媛県のキジハタ
瀬戸内海に面した愛媛県ではキジハタが多産し、刺し網の1種である建網や底引き網によって漁獲されています。
特に今治市の来島海峡はキジハタの産地として有名で、強い潮流と豊富な餌が育んだキジハタは脂の乗りがよく、身が引き締まっていて美味だそうです。本種が来島海峡に生息することに加え、夏の一時期にしか獲れないことから幻の魚とも呼ばれるようになりました。
愛媛県におけるキジハタの旬は夏であり、この時期の「来島海峡のアコウ」は愛媛県のプライドフィッシュにも選定されています。
愛媛県ではキジハタの活け造や煮付け、アコウめしなどが郷土料理として有名です。
キジハタの種苗放流
愛媛県で重宝されるキジハタですが、定着性が高いことから栽培漁業が盛んであり、毎年、県内で種苗放流がおこなわれています。
近年では8センチ程まで育てたキジハタを放流する方式がとられており、平成14年より今治市海域では毎年2万~4万匹の放流を実現しています。
燧灘、安芸灘、伊予灘では人工漁礁による増殖場が形成されており、小さなキジハタの保護・育成に欠かせないものとなっているようです。キジハタは2、3年かけて増殖場の内外で漁獲サイズに成長し、県内の海域ではキジハタの資源量が増えていることが推測されています。
幻の魚と呼ばれているキジハタですが、機会があればぜひ食べてみてください。
(サカナト編集部)
参考
(愛媛県東中予海域に造成された増殖場とキジハタ資源の関係についての検証)