サカナをもっと好きになる

キーワードから探す

ニュース

大型水槽を用いて<ニシン>の大規模産卵を再現 世界で初めて可視化に成功?

魚類における繁殖様式の1つ「集団産卵」は多くの種でみられ、群れの中で精子の放出と卵の放出を繰り返す特徴があります。

集団産卵の成功の有無は個体群維持だけではなく、漁業資源にとっても重要です。しかし、集団産卵は突発的に発生し、多数の個体が入り乱れることから目視観察が困難であり、詳細な研究が進んでおらず、メカニズムが解明されないままでした。

そのような中、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの研究グループは、ニシンを用いて集団産卵を再現。ニシンの集団産卵の行動を世界で初めて可視化することに成功しました。

この研究成果は「Scientific Reports」に掲載されています(Temporal changes in behavior during the group spawning event of Pacific herring (Clupea pallasii))。

魚の集団産卵

集団産卵は魚の繁殖様式の1つ。多くの種で見られ、群れの中で放精と放卵が繰り返して行われる特徴があります。

魚種によって異なるものの、複数の個体が同調して産卵することにより、配偶者との遭遇率や受精率が向上することが利点です。

また産卵は繁殖期間内で複数回にわたり生じることもあることから、捕食や環境変化により配偶子が無駄になるリスクを分散している可能性があるといいます。

クサフグの集団産卵(提供:PhotoAC)

この集団産卵の成功の有無は個体群維持、沿岸の生態系や漁業資源にとっても非常に重要なイベントとされています。しかし、集団産卵は野外で突発的に行われるほか、多数の個体が入り乱れることから目視観察が難しく、メカニズムは解明されていませんでした。

そのような中、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの宮下和士教授らの研究グループは、ニシンを用いて集団産卵を大型水槽での再現を実施。個体に行動記録計を装着することにより、産卵期の個体の行動を連続的に記録し、詳細なスケールで行動の同調性などのメカニズムの解明を試みています。

実験水槽でニシンの群れを再現

ニシンを用いた実験は2023年4月、函館市国際水産・海洋総合研究センター内の実験水槽で行われました。

ニシン(提供:PhotoAC)

911尾ものニシンを水槽に投入し、そのうちのオス38尾、メス15尾の計53尾に行動記録計(ロガー)を装着。水槽内に産卵するための人工藻場と水中カメラが設置されました。

この実験では、ロガーから得られたデータから時間とともにどのような行動変化があるのか調査が行われています。

ニシンの群来

今回、研究で用いられたニシンは北海道の重要な水産資源であり、大規模な集団産卵をすることが知られています。冬から春にかけて行われるニシンの集団産卵は「群来(くき)」と呼ばれ、乳白色に染まった海は北海道の風物詩です。

大集団で来遊したニシンたちは沿岸部の藻場に産卵。産卵時はペアを作らずに個々が藻場に腹部を擦り付けることで、放精と抱卵を繰り返します。

1

2
  • この記事の執筆者
  • 執筆者の新着記事
サカナト編集部

サカナト編集部

サカナに特化したメディア

サカナに特化したメディア『サカナト』。本とWebで同時創刊。魚をはじめとした水生生物の多様な魅力を発信していきます。

  1. 国内で飼育しているのは2館のみ!飼育下希少種<イロワケイルカ>の赤ちゃん誕生【宮城県仙台市】

  2. 「福」がふくらむフグの展示? 横浜中華街で<沖縄の海>を体験できる特別企画が開催【神奈川県横浜市】

  3. 世界的にも珍しい<魚竜>の化石が見つかる 30年以上前から美術館で展示?【岡山県高梁市】

RANKING

DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

関連記事

PAGE TOP

書籍『水族館人2 情熱と未来をめぐる15のストーリー』予約受付中!

様々な形で水族館に関わる「人」たちが、それぞれの情熱と未来を語り下ろす。
詳細はこちら