オオサンショウウオ科は世界最大級の大きさになる両生類のグループです。
本科は現在まで約6000万年も存続しており、オオサンショウウオ属など2属7種が知られています。また、現生種とほぼ変わらない姿の化石も見つかっており、これがオオサンショウウオが“生きた化石”と呼ばれる所以です。
過去に大分県宇佐市の約350万年前の地層から発見された化石は当時、比較標本や骨学的研究が乏しいことから、部位の同定で分類学的位置決定に至らなかったといいます。
そうした中で、京都大学総合博物館の野田昌裕研究員、京都大学人間・環境学研究科の松井正文名誉教授、京都大学地球環境学堂の西川完途教授による研究グループは、このオオサンショウウオ科化石を解析し、新属新種であることを明らかにしました。
オオサンショウウオ科は約6000万年も存続しているグループ
世界最大級の大きさになる両生類「オオサンショウウオ科」は後期暁新世から現在に至るまで、約6000万年も存続しているグループです。
現生種として、日本と中国に分布するオオサンショウウオ属、北米のヘルベンダー属といった2属7種が知られています。
また、現生種とほとんど姿が変わらない化石も発見されており、生きた化石とも呼ばれているのです。
オオサンショウウオ(提供:PhotoAC)一方、現生種の主要な生息地であるアジアでは、本科の化石が産出しているものの、最新の漸新世の化石種から現生種に至るまで約2,000万年の隔たりがあるといいます。
そのため、その進化史については謎に包まれていました。
安心院のオオサンショウ科化石
1995年~1997年、大分県宇佐市安心院(あじむ)地域の上部鮮新統津房川層(約350万年前)からオオサンショウウオ科化石3点が発見されています。
しかし、この標本は後に松井ほか(2001)によりオオサンショウウオ属の1種とされ、比較標本や骨学的研究が乏しかった当時は、部位の同定や分類学的位置の決定まで至らなかったのです。
宇佐市安心院の風景(提供:PhotoAC)今回の研究では、最新の知見に基づきこの標本について、詳細な分析が行行われました。
新属新種と判明
まず、安心院の標本と現生種の全身骨格を比較した結果、3点の化石がそれぞれ、前方胴椎、中部胴椎、尾仙椎に属することが明らかになっています。
次に、既に知られている化石種との比較では、他のオオサンショウウオ科では見られない独自の形態的特徴の組み合わせを持つことが判明。なんと、このオオサンショウウオ科化石は新属新種だったのです。
研究グループはこのオオサンショウウオ科を Limnospondylus ajimuensis (アジムオオサンショウウオ)と命名。種小名と和名は発見地である安心院に因んでいます。
かつては多様な環境に生息していた可能性
化石に残された成長線の観察と現生種の計測値に基づく推定では、アジムサンショウウオが18歳前後で全長約1.1メートルに達していた可能性が示されました。
アジムサンショウウオが発見された地層は、ゾウやワニなど現在の日本には生息していない動物の化石も多く発見されているといいます。当時の九州北部は現在よりも温暖かつ湿潤と考えており、本種もそのような環境に生息していたと推定されました。
日本に現生するオオサンショウウオ Andrias japonicus は河川環境に生息しています。アジムサンショウウオの発見は、かつてオオサンショウウオ科がより多様な環境に生息していた可能性を示すものとなりました。
オオサンショウウオ科の進化史の理解へ
今回の研究によって、大分県宇佐市安心院地域から発見されたオオサンショウウオ科化石を詳しく分析し、標本が新属新種であることが明らかになりました。
この成果はアジアにおけるオオサンショウウオ科化石の空白を埋めるとともに、進化史を理解する上で重要な知見となっています。
(サカナト編集部)