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<シロワニ>飼育の裏側から未来の水族館飼育員へのメッセージまで アクアワールド茨城県大洗水族館のサメ担当にインタビュー

茨城県には、サメの飼育に力を入れている水族館があります。

それが、「アクアワールド茨城県大洗水族館」。サメの飼育種類数は日本一です!

今回、そんなアクアワールド茨城県大洗水族館のサメ担当飼育員さんに直接お話しを伺うことができました。

お話を伺ったのは、魚類展示課の徳永幸太郎さん。水族館としての取り組みやサメ展示の裏側、素朴な疑問などのお答えいただきました。

展示を通して地元・大洗の海を伝える

━━まずは「アクアワールド茨城県大洗水族館」全体での取り組みについて、教えてください。

アクアワールド茨城県大洗水族館では、「地元・大洗の海を伝えたい」という思いのもと、日々幅広く海についての取り組みを行っています。それだけではなくて、多種多様な世界中の生き物たちまで幅を広げて、生物の素晴らしさ、海洋生物の素晴らしさを伝えていければと思っています。

━━サメに限らず、多くの生き物について発信しているんですね。

はい。当館は設立当時からここ大洗にありました。潮目もあり豊かな地元の海の素晴らしさを発信することを目指しています。

展示内容についても、水槽によっては周辺の海の断面を切り取ったような水槽もありますし、大水槽なんかでもイワシの群れが泳いでいたりと、水槽内のつくりこみにもこだわりを持って取り組んでいます。

アクアワールド茨城県大洗水族館の入り口。素敵なサメのロゴマークが目立つ(撮影:しょうじ)

━━ アクアワールド・大洗がサメにクローズアップするキッカケなどはありますか?

私がまだ入社する前のことですが、今から22年ほど前に大洗水族館はリニューアルオープンし、アクアワールド・大洗となりました。その頃まで、当館はまだサメの水族館ではなく、いわゆる一般的な地元の水族館でした。

リニューアルするにあたって、何か特色がある水族館にできないかという話し合いが飼育員の間で持たれたそうです。以前から大洗の海は魚がたくさん集まり、それに伴ってサメもたくさん集まるような海域があるため、定地網なんかでサメがたくさん入るというのも知られていました。

古い水族館でもサメを展示していたという経緯があったことも重なり、「サメ」にクローズアップしていこうということでまとまり、アクアワールド・大洗はサメの飼育に力を入れるようになっていきました。

そのタイミングでサメの水族館になったので、当館のロゴマークもサメになりました。

アクアワールド・大洗の顔となるサメたち

━━では、現段階で最も熱意を持って取り組まれていることはなんでしょうか。

そうですね。当館はやはりサメの飼育に力を入れています。

「サメの飼育種数が日本一」というのは、個人的にも良い特徴だなと思ってます。 また水族館全体としても、アクアワールド・大洗がいわゆる“サメの水族館”として、一般の方々から認識され、親しみを持っていただきたいと考えています。

そのためにも、サメに関する飼育や研究に関しては、当館としてはやはり一番力を入れています。

━━アクアワールド・大洗さんのイメージといえばやっぱりシロワニですよね。

そうですね。やっぱり来館者にとってもかなりインパクトがありますし、記憶に残りやすいですね。シロワニは当館の顔的な存在でもあります。

水族館の顔(撮影:しょうじ)

水族館の顔(撮影:しょうじ)

当館のシロワニは、今から20年ほど前に南アフリカからやってきました。その頃ちょうど全国的に水族館に全国のシロワニが導入され始めた時期だったので、それの流れに合わせて、当館も飼育を開始することができ、その個体も現在に至るまで飼育を続けています。

当初、シロワニが当館に来た時はまだ幼く、サイズも小さかったんです。当時から、この個体も大きく成長させることを目標にしていましたし、いずれは繁殖も……と、繁殖をベースに考えていました。

今では実際に、国内ではじめて繁殖に成功したという事例もありますから、ドンと打ち出していきたい当館の代表的な生き物ですね。

━━他に、徳永さんおすすめの水槽があればぜひ教えてください。

なごみの海ゾーン5階にある「さめっこるーむ」という水槽は、結構面白いなと思っています。普段は当館でうまれた卵の状態のサメや赤ちゃんサメを展示している場所です。

現在は、シマザメという種類の小さな赤ちゃんサメたちが展示されています。このサメたちは今年の3月に国内で初めて繁殖することができた種類で、非常に貴重な研究成果をもたらしてくれたサメで

シマザメの赤ちゃん(撮影:しょうじ)

そんな珍しいサメや、珍しいトピック的なサメたちを、さめっこるーむで展示してますので、 そういうところに注目していただきたいなと思います。

あとは、やはりサメ水槽が私としても当館としてもイチオシではあるのですが、イルカ・アシカオーシャンライブであったり、大水槽のイワシの群れなどはお客様に人気がありますし、ぜひそちらも見ていただきたいですね。

━━イモリザメの水槽もとっても見どころがありますよね。

そうですね。当館で飼育しているイモリザメは、ちょうど千葉県と茨城県の県境の「銚子」のあたりで、漁師さんのご協力のもと、採集したサメです。

深海性の希少なサメで、いい状態で搬入することすら難しいサメではあるんですが、その時たまたま良い状態で当館に搬入することができましたので、長く展示し続けて、飼育最長記録を継続して更新しています。

イモリザメの展示(撮影:しょうじ)

━━イモリザメの飼育に伴ってなにか苦労されていることはありますか?

イモリザメがすむ深海は、とても深くて冷たい海です。やっぱりその種類に合わせた環境作りをするのはなかなか難しい作業です。

水槽の水温が年中10℃前後の種類もいますし、冬はいいんですが、冷却に力を入れなければならない夏はかなり繊細に気を配らなければすぐ水が温まってしまうという面でもかなり維持管理が大変です。

あとは、深海生物は敏感な目を持っていますので、明るい光を当ててしまうとすぐ炎症を起こしてしまいます。また、人間(飼育員)側の目線で言えば、暗い中でずっと仕事を続けなきゃならないので、物理的にもかなり難しいです。

足を運んでくれた人に「学んでもらう」工夫

━━お子さんとの交流やSDGsについての取り組みも行われているんですね。

はい。当館では季節に合わせた様々なイベントを企画していますが、中でも毎月開催している「自然体験塾」はかなり人気の高いイベントです。ご家族で参加していただいたお客様が、後日ご自身のお子さんたちに同様の体験イベントを経験させてあげる、というサイクルもうまれているようです。お子さんにもとても喜んでいただいています。

飼育したり展示したりすることだけではなくて、調査にも積極的に参加するようにしています。ウミガメの調査をはじめとした環境問題の現状を把握できるような調査などは、水族館としても積極的に参加するようにしています。

それから、繁殖ですね。生き物を外から捕ってきて展示するだけではなくて、水族館の中でしっかりと繁殖をさせて、末永く継続して展示していくという取り組みがすごく大事だと考えています。

その象徴がまさに、シロワニの繁殖研究ですね。 シロワニのような貴重な絶滅危惧種のサメをしっかりと水族館だけで繁殖させていって、次の世代にまた繋いでいって、お客様に感動を与え続けるという活動がこれからもできればと考えています。

━━シロワニの水槽の反応はどうですか。

あのシロワニの顔を見ると、大人の方も含め、大体の方は怖がってしまいますね。ただ、シロワニ自体すごく穏やかな性格ですし、そういったことをしっかり話して伝えてあげると、「え~!」という声があがるくらい驚かれる方も多いです。

水族館としては、サメに関わらず、一個体の美しさであったり、素晴らしさであったりという部分もしっかり見ていただきたいです。それと同じように、地元の海や身近な海という存在が、すごく素晴らしいところだということを、この施設を通して感じていただきたいと思っています。

イベントでもそうですが、海のことや海洋生物のことを学ぶことで、「豊かな海をいつまでも守らなきゃいけないな」という意識を持っていただけると、すごく嬉しいです。

━━ウバザメのはく製などの展示は、かなり珍しいですよね。個人的にありがたみを感じます。

はい。ああいったサメは、どうしても生きた状態で展示をすることが難しいサメです。

大きなウバザメのはく製(撮影:しょうじ)

世界には飼育展示が難しいサメもたくさんいますので、こういったかたちで展示をしています。大きいサメを見る機会は多くないと思いますし、(はく製でも)これまでに見たことのない生きものを見ることができるというのは、来場者の皆さまにとってかなり非日常的なことかもしれません。

そのようなサメに関しては、なるべく剥製や標本という形で、お客様にご覧いただければと思っています。博物館的な要素も含めてお伝えしたいと思いますので、なるべく展示をしていきたいですね。

━━サメについてのラボスペースが新設されていましたね。

最近のリニューアルで新設されたコーナー「シャークダディズルーム」という部屋になります。

シャークダディズルーム(撮影:しょうじ)

これまでも裏の方に色々な顎骨標本であったりとか、剥製なんかは収蔵してたんですが、収蔵してるだけでお披露目する機会がないのはもったいないということで、このコーナーを新設しました。

展示されている剥製は、基本的に当館で集められたサメを元に作られた剥製ですね。

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しょうじ

さもないサメ好き人。幼少期から全国の水族館巡りを趣味としながら、大学はデザイン系学科に進学。編集も文字書きも絵もイラストも満遍なくかじりつつ、現在はサメと人との架け橋的存在を目指して奔走中。

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