深海に住む不思議な魚、チョウチンアンコウ。
そのユニークな見た目と、オスとメスの驚くべき関係性には、思わず目を疑ってしまうような驚きが詰まっています。
暗い海の底で、ひっそりどころか意外にドラマチックな生態を持つ彼ら。その姿からは想像もつかない深海のロマンと、命の奥深い仕組みを垣間見ることができます。
一般的なイメージの<チョウチンアンコウ>は全てメス
「チョウチンアンコウ」と聞いて思い浮かべるのは、しゃくれた下あごが特徴的な不気味な顔つきと、茶色いだらんとした体つき、そしてピカピカ光る提灯のような突起が頭からぶら下がっている姿ではありませんか?
実はそのイメージするチョウチンアンコウは全てメスなのです!
チョウチンアンコウのメスの大きさは30〜50センチほどですが、オスはなんと5センチ程度なのです。メスのわずか10分の1のサイズしかありません。
メスの体の一部に? オスの壮絶な運命
さらに興味深いのは、チョウチンアンコウのオスとメスの独特な関係性です。
オスはメスを見つけると噛みつき、なんとメスの体の一部になります。
メスに嚙みつくと、もはや不要となった目やヒレは徐々に退化。最終的には血管も一体化し、メスの体から栄養を得るようになります。
その姿はまるで、メスの体にできた“イボ”のよう。メスに取り込まれたオスに残るのは、繁殖のための精巣機能だけです。1匹のメスに、複数のオスが寄生することもあります。
ではチョウチンアンコウのオスは、なぜメスと一体化する必要があるのでしょうか。
深海で種を絶やさないための戦略
出会いのチャンスが限りなく少ない暗い海の底。小さな小さなオスは提灯の光を頼りにメスを探して必死に泳ぎ、ようやく見つけた運命の相手にガブリと噛みつきます。
深海は餌も少なく生物の数もまばらな過酷な世界で、繁殖相手を見つけるのは非常に難しい環境です。そのためオスは、ようやく見つけたメスと二度と離れない選択をします。
そしてメスの一部となり、子孫を残そうとするのです。
オスの体は退化しますが、これはある意味で進化といえるのかもしれません。
精子の提供という大事な役目を終えて命をつないだオスは、精一杯の役割を果たして静かにその一生を閉じます。
運命的な出会いにすべてを捧げるチョウチンアンコウのオスは、まさに「一期一会」を体現している存在。その生きざまは、深海で輝く小さな奇跡そのものです。
(サカナトライター:minto)