皆さんはネコギギという魚を聞いたことがありますか? 日本固有種のナマズの仲間で、国の天然記念物にも指定されています。この記事では、希少な魚ネコギギについて紹介します。
天然記念物にも指定されているネコギギってどんな魚?
ネコギギとは、ナマズ目ギギ科ギバチ属の淡水魚。成魚は10~15センチほどの小型の種です。
伊勢湾及び三河湾に注ぐ河川の上流、中流域に生息している日本固有種です。夜行性で、昼間は川辺の石の間などに隠れて過ごしています。水温が15度を超える5~9月には、夜間に餌を探して活動を行います。餌となるのは、貝やエビなどの底性動物や動きが遅い水生昆虫が対象です。
新種として記載された当初、本種はギギに似ていることから「ギギモドキ」と命名されました。しかし、既に中国にすむギギの仲間にギギモドキという名がついていたため、後に改められました。
ネコの名は、ネコのようなヒゲがあることや、ギギよりも丸みがある外見に由来するとされています。
ネコギギが好む環境は?
ネコギギは近年、河川の改修工事や豪雨に伴う土砂災害によって激減しているといわれており、環境省・水産庁共に絶滅危惧種として指定されています。
国立研究開発法人 土木研究所 自然共生研究センターの調査(天然記念物ネコギギはどんな形の川を好むのでしょうか?-自然共生研究センター)によると、ネコギギは蛇行した川に多く生息していたそう。流れが緩まる淵の部分を好んで暮らしているようです。
先述の通り、昼間は遊泳せずに石の下などで過ごし、夜間に活発に活動しています。
韓国で天然記念物に指定されているウサギギギ
韓国には、外見も生態もネコギギによく似た魚ウサギギギが生息しています。
この魚もネコギギと同様に韓国の天然記念物として指定されており、絶滅の危機に瀕しています。ウサギギギもネコギギと同じように、丸い体からウサギを連想して名づけられました。
韓国では人工増殖や放流など、保全のための活動が実施されています。
ネコギギを守るための積極的な保全活動
国の天然記念物に指定されているネコギギは、絶滅危惧種にも指定されています。ネコギギが住む県や市では、積極的な保全活動が行われています。
三重県いなべ市には、ネコギギが生息する水系のひとつ、員弁川水系があります。同市は10数年にわたるネコギギの保護増殖活動が評価され、2023年度(第25回)の日本水大賞環境大臣賞を受賞しました。
2023年10月29日には、日本水大賞環境大臣賞の受賞を記念して「ネコギギ保全シンポジウム」が開催されました(郷土財としてのネコギギ保全 「ネコギギ保全シンポジウム」の紹介-いなべ市)。同市で現在も保全の姿勢が続いていることは、同じように次世代へ種を繋ぐ活動をしている人にとって心強いのではないでしょうか。
(サカナト編集部)