日本の食卓で古くから親しまれているサバ。その豊かな風味と栄養価は、時代を超えて多くの人々の健康と食文化を支えてきました。
サバは青魚の代表格として、鮮やかな銀色の体と脂の乗った食味が特徴。ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)、ビタミンやミネラルなどを豊富に含み栄養価が高く、健康食品としての評価も高いです。
その味わい深さは、漁師たちが海から持ち帰る新鮮な恵みとして、また愛情込めて調理される食材として、古来より広く受け入れられてきました。

古代から中世までのサバ食文化
古代においては、サバは沿岸部の表層近くを群れで泳ぐ習性から比較的漁獲しやすく、また味わいのよさで重要なタンパク源となったのではないかと見られています。
青森県の三内丸山遺跡からもサバの骨が見つかっており、縄文時代から食べられていたことがうかがえます。
一方で、「アシが早く痛みやすい」ことで知られる魚でもあり、身の部分から微生物の分解作用によって生じるヒスタミンは加熱しても除去できない中毒物質のため、塩で締めるなどの適切な処理が早くから知られていたのだろうとも推測できます。
中世に入ると、戦乱や疫病など厳しい時代背景の中で保存食としても塩サバや干物の価値はさらに高まり、武士や貴族階級に知れ渡って普及していきます。
多様化するサバの調理法
伝統的な調理法としては、塩焼き、煮付けなどが挙げられます。
近世に入ってからは流通手段として従来の塩サバ、干物に加えて味噌漬けも登場し、酢締めの調理法も加わって味わいのバリエーションも広がっていきます。

サバを使った郷土料理は京都の棒ずしや大阪の船場汁、高知の姿寿司と数多く、日本全国で様々な方法によって食べられてきました。
近代に入ると、今日では一般的に使われるような調味料が普及するようになり味噌煮が登場。また、輸送および冷蔵技術が進化することによって、サバはいよいよ大量漁獲・大量消費の時代に突入しました。
海外の良質なサバの大々的な輸入の道もひらき、安くて旨い魚の代表格にのし上がっていきます。
ごく最近ではサバの陸上養殖も行われるようになり、アニサキス問題を解決して安全な生サバの刺し身も食べられるようになってきました。
気軽に食べられる魚の代表だったが……

サバは、古代から培われてきた飽くなき食への挑戦、そして現代の流通と冷蔵技術が組み合わさって花開いた、食文化の縮図といえるでしょう。
時代ごとに変化しながらも、その美味しさと栄養価は変わらず、多くの人々に愛され続けています。
しかし近年では、日本近海のサバは急激に数を減らし漁獲も激減、価格も高騰しています。理由は様々なことが挙げられていますが、余談を許さない状況といえるでしょう。
一方で、海外では厳格な漁獲制限によって、資源量が劇的に回復した事例もあります。
大昔から人々を魅了し続けてきたサバですが、その未来を救うのはその美味しさもさることながら、人々の途切れることない関心にかかっているのかもしれません。
(サカナトライター:華盛頼)