大盛況での開幕となった「釣りフェスティバル2024」のかたわら、1月19日13時よりパシフィコ横浜アネックスホール2Fの会場で日本釣振興会環境委員会主催「淡水魚はなぜ減った?」と題したシンポジウムが行われました。
定員100名の事前登録制で誰でも参加できるという形式でしたが、かねてより話題だった本テーマの講演とあってか会場は満席、壁際に席が増設されるほどの熱気に包まれた中での開催となりました。
淡水魚はなぜ減った?
プログラムは3つ。1つ目は「淡水魚の生息環境を考える」と題し、国立研究開発法人水産研究・教育機構主任研究員の坪井潤一さんの講演。河川や湖沼の水辺環境には魚をはじめ多くの生物が暮らしており、漁獲や汚染、開発を通じて人為的な影響を受けやすい環境でもあります。魚が棲息する川のほとりで私たちが暮らしていくにはどうしたらいいのかを考えてみよう、というテーマで講演が行われました。
2つ目は、埼玉県環境科学国際センター水環境担当部長の木持謙さんによる「埼玉県内河川における魚類相と水質の変遷 -環境DNA分析の魚類調査への適用-」という講演。埼玉県の河川で魚類環境DNA調査を実施し、これまでに行われてきた捕獲調査とあわせて魚類相や水質の変遷の比較検討が発表されました。結果としては、検出魚類は増加傾向にあり、また水質の指標のひとつBOD(生物化学的酸素要求量)も改善傾向にあるということが示されました。
3つ目は、東京大学大学院教授の山室真澄さんによる「田んぼの農薬で魚が減った? 私たちにできること」という本シンポジウムの主題に関する講演が行われました。内容は山室さんがこれまでに発表を重ねてきた「宍道湖にネオニコチノイド系農薬が流れ込み水生生物が激減している」というもの。
ネオニコチノイドの危険性
本テーマについては「ネオニコチノイド系農薬」の危険性を指摘するもので、水田に使われる同農薬が水系に流出、湖に蓄積することで甲殻類や節足動物が激減し、これに連鎖してエサがなくなった魚も激減しているというもの。宍道湖では同農薬を使い始めた年からウナギとワカサギが壊滅し、他の要因も検討して、他は考えられないというデータをもとに論文が発表され、日本全国でも同様の事例が起こっているのではないかという衝撃的な推論となっています。
ネオニコチノイド系農薬については、国内では安全性があり問題がないとして使用が認可されていますが、海外ではすでに使用を禁止している事例もあると指摘。早急な今後の対策が求められるとしています。
しかし現実的な問題として、日本の農業は従事者の高齢化、後継者不足により農薬に頼らざるを得ないところがあり、質疑応答も白熱。当日シンポジウムに参加していた無肥料無農薬栽培を実践している農家の方の事例でも、実際のコメの売価は市販品に比べて約6倍程度になっていると紹介されていました。
本テーマは水産業だけでなく、農産業にも根本的に関わる非常に大きな課題といえるもので、今後の抜本的な対策の実施が望まれ、日本釣振興会としても全力をあげて同問題解決を掲げていきたいとしてシンポジウムは閉幕しました。
同公演の詳細は、日本釣振興会のYouTubeチャンネルにて後日公開される予定です。
(サカナト編集部)