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京都の高級ズワイガニ<間人ガニ>が幻と言われる理由 資源保護とブランド化を両立?

今でこそ誰もが知るカニのおいしさですが、その昔、カニ食は現在ほど一般的な食事ではありませんでした。

高度経済成長期からバブル期にかけて、かに道楽にはじまり、旅行ブームを通して新しく発見され磨かれてきた「カニの味覚」。

その台頭は、松葉ガニや香住ガニのような高級品ブランドから、より大柄で安価なタラバガニや無銘のロシア産ズワイガニなどおいしい深海ガニたちです。

今回はそんなカニたちの中でも、知る人ぞ知る幻の「間人(たいざ)ガニ」をご紹介します。

厳選されたブランドカニ<間人ガニ>

間人ガニは、京都府京丹後市の間人漁港で水揚げされるズワイガニの中でも、特に厳選されたものだけが名乗ることを許されるブランドガニです。

その最大の特徴は、日帰り操業による極上の鮮度。日本海の近海に限って操業し、朝に出漁して夕方には帰港するため、冷凍処理をせずに活きたままの状態で地元に届けられます。

間人漁港の風景(提供:PhotoAC)

間人漁港には現在5隻の曳網漁船しかなく、水揚げ量もごく限られています。

さらに、漁師の目利きでサイズ・身入り・甲羅の硬さ・色合いなど、厳格な品質基準をクリアしたカニのみが「間人ガニ」として認定されるため、市場に出回る量はごくわずか。

そのほとんどが地元の高級旅館や料理店に流通するため、「幻のカニ」とも称されるのです。

間人ガニが「幻」と呼ばれる理由

間人ガニがここまで稀少なのは、資源保護と品質への徹底したこだわりがあるからです。

京丹後市では、未成熟なオスのズワイガニの自主的なリリースや漁獲枠の制限といった取り組みをいち早く導入し、持続可能な漁業を目指してきました。

間人ガニ(提供:PhotoAC)

さらに、間人ガニには1匹ごとにタグがつけられており、漁船名や水揚げ日時まで追跡可能なトレーサビリティも導入済み。まさに「漁師の顔が見えるカニ」なのです。

間人ガニの成功は、単なる希少性や味の良さにとどまりません。それを支えているのは、地域ぐるみの取り組みです。

漁協や自治体、旅館業者らが一体となり、品質の維持と情報発信、観光との連携を続けてきました。いまや間人の冬は、カニを目当てに全国から観光客が訪れる一大ブランドとなっています。

ズワイガニの未来

しかしながら、ズワイガニの未来には懸念も残ります。

日本海では一部で漁獲量が回復傾向にあるものの、東北地方では減少が深刻化。また、アラスカのベーリング海では2021年以降、ズワイガニの大量死が確認され、原因はいまだ完全には解明されていません。

そんな中、間人ガニのような持続可能性を重視した漁業モデルは、これからの水産業のあり方を示す好例といえるでしょう。

一度味わえば忘れられないその甘みと弾力、そしてそれを支える人々の営みに、ぜひ注目してみてください。

(サカナトライター:りかえもん)

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