サカナをもっと好きになる

キーワードから探す

楽しむ

身近な水辺が愛おしくなる! 『たくましくて美しい 淡水生物図鑑』ブックレビュー

クリッとした丸い目がキュートな、オオサンショウウオの幼体が表紙を飾る『たくましくて美しい 淡水生物図鑑』(関慎太郎(2025)、創元社)は、田んぼや用水路などの人工的な水辺から、池や川、湖といった自然の淡水域まで、身近な生きものたちの魅力をぎゅっと詰め込んだ1冊です。

著者の関慎太郎さんは1972年、神戸市生まれ。幼少期から淡水の生きものに魅せられ、以来50年近く向き合い続けてきました。

自然写真家として全国各地、ときに海外にも足を運び、生きものたちの姿を記録する一方で、琵琶湖博物館や京都水族館、さらには日本両生類研究所の立ち上げにも携わり、同分野で広く知られる存在です。

琵琶湖(提供:PhotoAC)

2022年7月には滋賀県大津市の琵琶湖畔に、生息域外保全施設を備えた小さな水族館「びわこベース」を開館。200種以上の淡水生物を展示しながら、減少しつつある水辺のいきものを未来へつなぐ活動を続けています。

多彩な淡水生物を一望できる、水辺のガイド

本書には、淡水魚をはじめ、両生類(カエル、イモリ、サンショウウオなど)、爬虫類(ヘビ、トカゲ、カナヘビ、ヤモリ、カメなど)、貝類、水生昆虫、甲殻類といった多彩な顔ぶれが登場します。

こうした幅広い淡水生物を横断的に紹介しているのも、本書ならではの見どころの一つで、淡水生物の世界への入口としても格好の一冊です。

全3章構成のうち、第1章では著者が選んだ “推し”の淡水生物33種を紹介。アブラヒガイのような珍しい琵琶湖固有種から、鮮やかな婚姻色をまとったオイカワのように、身近でありながら改めて惚れ惚れするような生きものまで──限られた数に凝縮された、たくましくて美しい生きものたちの姿に出会えます。

オイカワ(提供:PhotoAC)

第2章では、色や模様といった見た目や、子育てに代表される生存戦略など、テーマごとに掘り下げ、淡水生物の多様な世界へといざないます。

最終章「びわこベースとフィールドワーク」では、関さん自身の歩みをたどりながら、巻末には師匠である写真家・飯村茂樹氏との対談も収録。生きものと向き合う姿勢や、自然写真家としての哲学までが語られます。

“底なし沼”のような淡水生物の魅力

生きものの魅力に加え、関さんの人となりが、ありありと伝わってくるのも本書の特徴です。

生きものの写真に添えられる解説文には、関さん自身の驚きや愛着がにじみ、ページをめくるたびに淡水の生きものたちがぐっと身近に感じられます。そこにあるのは、自然写真家として、そして一人の「生きもの好き」としての視点です。

たとえば表紙にもなっているオオサンショウウオについては「これほど巨大な生きものが日本にいることが素晴らしい」「私を水辺に誘ってくれる、いつまでも関わっていたい生きものの一つです」と綴り、その愛情がストレートに伝わってきます。

50年近く淡水生物に向き合いながらも「まだまだ撮りたいものが沢山ある」「その魅力は尽きない」と語る関さん。海の深さとはまた異なる、一度ハマったら抜け出せない“底なし沼”のような──そんな底知れぬ淡水生物の世界を、この図鑑とともに覗いてみませんか?

きっと身近な水辺が、これまで以上に愛おしく見えてくるはずです。

(サカナト編集部)

参考文献

創元社-たくましくて美しい 淡水生物図鑑

小さな水族館 びわこベース

 

RANKING

DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

関連記事

PAGE TOP